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2013/10/11

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第9回 若者のフラットさがアジアビジネスの武器                                                    多摩大学経営情報学部 金 美徳 教授

  • 多摩大学経営情報学部 金 美徳 教授

    キム・ミドク 多摩大学経営情報学部および大学院経営情報学研究科教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所、三井グループ韓国グローバル経営戦略研究委員会委員などを経て現職。

  • 韓国企業と日本企業 第9回 若者のフラットさがアジアビジネスの武器

◆逞しい無駄なプライド捨てた行動力◆

 この連載『韓国企業と日本企業』の第6回―8回では、日韓企業の強み・戦略を6つの側面から比較分析した。改めて日韓企業の戦略の違いを一目でわかるように一覧表にすると以下のようになる(図表参照)。この一覧表をもとにさらに分析を付け加える。

 「日韓企業の6つの戦略を比較して、今後の日本企業にとってどちらの戦略が重要か、もしくは優先されるべきか」というアンケート調査を多摩大学経営情報学部の学生約200名を対象に実施してみた。

 その結果は、何と6つの戦略のうち3つが韓国企業の戦略の方が、重要、もしくは優先されるべきだという回答があった。

 この調査は、2011年と12年に2回実施したが、同じ結果で出ており、それも9割を占める圧倒的な意見となっている。この韓国企業の3つの戦略とは、①経営スタイルの「マーケティング志向経営」、②海外戦略の「現地化」、③リーダーシップの「オーナー経営者のトップダウンによるスピード経営とリスク・テーキング」である。

 これは、逆に言えば日本企業の戦略、すなわち①経営スタイルの「モノ作り志向経営」、②海外戦略の「日本化(日本モデルをそのまま輸出する)」、③リーダーシップの「サラリーマン経営者の優れたバランス感覚とリスク回避力」は、経営効果が落ちており、改善の余地があるということとなる。

 学生は、ビジネスに関して当然の如く全く経験がなく、素人である。しかし学生なりに日本企業の問題点や日本経済の課題について何か気づき始めているようだ。

 果たして日本の学生や若者は、どのように考えているのだろうか。学生や若者と多くの議論を重ねる中でわかってきたことは、モノ作りに対して、過剰な期待をしていないことだ。言い換えればモノ作りを肩の力を抜いて冷静に評価しているとも言える。

 そしてモノ作りよりも徹底してマーケティングを強化すべきだ、またそのためにも現地化が必要と考えている。

 さらにスピードがあり、リスクに強いリーダーシップを求めているということがわかる。これは、ある意味、至極当然なことで、驚くほどのことではないのかもしれない。

 議論の中でわかったことのもう一つは、失われた20年、世界的不況、東日本大震災、就職氷河期など厳しい環境の中で学ぶ学生や必死に自立しようとする若者は、その思考方法においてフラット(平坦)であり、行動においてはスマート(賢明)だということだ。

 外見の大人しさや優しさから一見、頼りなく見られがちであるが、内面の柔軟な思考や無駄なプライドを捨て去った行動力は秘めた力強さと言える。この「フラットさ」と「スマートさ」は、アジア企業の経営を学び、日本企業の経営を変革するには、最も必要な経営能力であり、経営センスである。

 今、日本企業には、若手社員のこのような強みをアジア新興国ビジネスに活かせる企業文化が求められている。

 学生や若者との議論では、他にも日韓企業の戦略の融合方法や日本のサービス業がアジア新興国市場に進出するためのビジネスアイデアなどひっきりなしに意見が飛び交った。


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