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2014/03/21

<オピニオン>転換期の韓国経済 第50回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 転換期の韓国経済 第50回

◆対中輸出依存度が過去最高に◆

 昨年は韓国の対中経済関係が強まった年になったことを前回指摘した。対中輸出依存度が26・1%と過去最高になったほか(下図)、中国からの観光客数が著しく伸び、日本を抜いて最多となった。

 さらに外交面では、6月末に実施された韓中首脳会談後の共同声明で、「戦略的協力パートナーシップ」を充実させること、そのために、①政治・安全保障分野の戦略的意思疎通を強める、②経済、社会分野の協力を一段と拡大する、③両国民間のさまざまな形の交流を促進し、両国の人文(人と文化)の結びつきを強める活動を積極的に推進することが明記された。

 共同声明とは別に発表された「中韓戦略的協力パートナーシップ充実行動計画」では、経済貿易協力の拡大に関して、2015年の貿易総額3000億㌦の目標達成、ハイレベルで全面的な自由貿易協定の締結、相互投資の拡大、未来志向の協力(技術開発、省エネ、金融通貨協力、環境対策、高齢化対策ほか)などが盛り込まれた。

 日本より先行して、韓国と中国との間で二国間FTA交渉が進められているため、韓国企業の中国重視はしばらく続く可能性が高い。実際、一部のアンケート調査結果からは、日本企業が東南アジアを重視する姿勢を鮮明にしているのに対して、韓国企業は(東南アジアでの事業を拡大しつつも)中国を最重視していることが明らかになっている。

 この理由には、①すでに中国ビジネスに深くコミットしていること、②市場規模の点で中国にとって代わる地域が存在しないこと、③東南アジアには日本企業が古くから進出しており、高いシェアを握っている市場があること、④中国との関係が良好で反日暴動のようなことが生じていないこと、⑤それと関連して、中国リスクに対する許容度が日本企業よりも大きいことなどが指摘できる。

 中国との関係が強まることは同時に、韓国企業が中国経済変動の影響を強く受けるようになることを意味する。実際、中国の成長減速や中国における生産過剰の影響を受けて、経営が悪化した企業も現れているため、韓国企業にはこれまで以上に環境変化への対応力が求められる。

 沿海部における人手不足や賃金高騰、内陸部の開発推進と成長加速、競争の激化、中国企業の台頭など中国の事業環境は急激に変化している。こうしたなかで韓国企業が推進しているのが「Go West戦略」である。これには生産拠点を内陸部にシフトしていくこと、成長が期待できる内陸部の需要を積極的に取り込むことの二つの意味がある。

 サムスン電子はNAND型フラッシュメモリーを西安で生産し、中国で操業しているグローバル企業に供給する予定である。また、現代自動車は内陸部の需要取り込みに力を入れている。12年に第三工場を稼働させて生産能力を100万台にするとともに、四級以下の中小都市を中心に販売網を広げてきた。

 日系メーカーの多くが一級~三級の大中都市を中心に販売網を拡大したのに対して、現代自動車は地方都市に販売網を広げることにより需要の取り込みに成功したのである。

 こうした一方、サムスン電子がベトナムをスマートフォンの主力生産基地にしたほか、中国でテレビ用液晶パネルを生産して、国内ではモバイル用パネルに特化する計画を立てているように、中国経済の変化に対応した事業の再編成とリスク対策を進めている。

 中国との関係が強まることにより、韓国政府も似たようなジレンマに直面するようになった。経済政策面では、内需の振興を図って安定成長をめざしていくことが望ましいが、目先の成長のためには、高成長を続ける中国への輸出を伸ばしていくことが近道である。

 また外交政策でも、中国を過度に重視した政策をとると対米関係を損なう恐れがあり、対米、対中外交の均衡に腐心するという問題を抱えるようになった。今後の韓国と中国との関係を、こうした複合的な視点からみていくことが重要であろう。


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