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2014/02/07

<オピニオン>韓国経済講座 第159回                                                        アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

  • アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

    かさい・のぶゆき 1948年、神奈川県生まれ。国際開発センター研究員、ソウル大学経済研究所客員教授、秀明大学大学院教授を経てアジア経済文化研究所理事・首席研究員

  • 韓国経済講座 第159回

◆打開策か、焼け石に水か◆

 昨年のクリスマスは久しぶりにソウルで過ごし、有名指揮者の鄭明勳とソウル市立交響楽団のすばらしい送年コンサートを最前列で聞くことができた。楽曲の余韻に酔いながらソウル市庁舎前の広場に戻るとそこは騒然とした場面が広がっていた。マスコミは鉄道労組が政府の民営化に反対してここ連日大規模なデモを続けていると報道していた。実は、ソウルはこの時期北朝鮮の張成澤処刑後の北朝鮮の動向を心配する報道と鉄道労組のデモ報道でてんやわんやであった。そこに安倍首相の靖国参拝が突如として報道されたことで、ニュース番組は掛け持ちで二重、三重の放送が続いていたのだ。芸術の殿堂のコンサートホールは唯一の癒しの場であった。

 さて、労組デモは民営化反対とは言いながら、その実政府が鉄道市場競争を狙い経営体質改善を促すため、水西駅発の高速鉄道KTX運営のためKORAIL(韓国鉄道公社)の子会社として設立することに労組が民営化につながるとして反対したものである。この背景には李明博政権以来、莫大な負債を抱え毎年大きな営業赤字を出し続ける公企業を根本から改めないと再び財政危機に陥るとの強い危機感が政府にある。KORAILに関しては負債・赤字を出し続けても年間平均賃金は毎年上昇し類似職種の民間の2倍を超え、職員の子供に職席を譲る雇用世襲制まで存在するとの報道もあり、公企業の赤字体質はこれ以上放置できない限界水準にあるのだ。

 2013年末で国の負債は1053兆ウォンで、国内総生産(GDP)の80%に達する見通しだ。これを償還すればよいかと言うと、ことはそう簡単ではない。これは中央政府債務と地方政府債務、国家公企業負債、地方公企業負債を合算したもので、保証債務を除いた直接負債だけを集計したものである。つまり隠れた国家債務があるのだ。

 そればかりではない。2013年国際通貨基金(IMF)が「公共部門負債作成指針」を発表したことにより、韓国もこれに合わせ14年3月から国家負債の範囲をこれに合わせる必要がある。これまで市場性が高いとして一般政府負債統計から外していた206公共機関の負債が追加され、439公共機関債務が計上されることになる。その合計は1500兆ウォンとも言われている。債務が限界水準にあることが分かろう。

今回玄旿錫経済副首相兼企画財政部長官が発表した「経済革新3カ年計画指針」はかかる状況を計画的に改善することが狙いである。方針を見ると、「わが経済の新たな変化と跳躍のため、構造的で痼疾的な問題を探し改善し未来変化に潜在的に対応するため」とし、特に痼疾的、即ち長い間の悪い習慣として公企業をはじめとする放漫経営体質一掃に狙いを定めていることが分かる。

 掲げた図は方針から引用したものであるが、その目標を①基礎が堅固な経済、②躍動的な革新経済、③内需・輸出均衡経済に置き改革を実現しようと言うものだ。とりわけ最初の推進戦略である公共機関の正常化については、負債の管理強化、類似・重複事業の整理、放漫経営の解消、不正防止などを具体的な目標としており、政府の強い姿勢が窺える。関連して闇資金の温床である地下経済の摘発や税金泥棒とまで言われている補助金の不正受給の防止などの財政・税制改革推進で財政健全化実現も掲げている。

 経済開発計画はかつて朴大統領の父故朴正熙大統領が始めたものであるが、実は第一次5カ年計画の基になったのが檀紀4292年(1959年)に当時の復興部産業開発委員会から出された7カ年計画の前半部分が「経済開発3カ年計画案」であった。これは当時国会で審議されたものの李承晩政権崩壊でお蔵入りになっていたものである。その後朴政権により出された経済開発5カ年計画はこれを基にしたものであるが、その実施が韓国経済の発展エンジンになったことは周知の事実である。今回の3カ年計画が親子二代のエンジンになるかどうか…。本案は2月末ごろ確定され3月から実施される予定と言う。焼け石に水とならないように注視したい。


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