◆就業パラダイムの転換◆
大学生の就業が冬の時代に入ってから久しい。特に注目されるようになったのは、1997年のIMF危機以降実施された企業改革以降で、ワークアウトや系列企業の整理統合、倒産などが常態化し、朝出掛けて一日中公園などで過ごす解雇者が話題になってからである。その後2000年代にかけて就業者数の増加傾向を見せたものの、03年には景気低迷の影響もあって、製造業部門からの労働を吸収してきたサービス業部門も頭打ちになった。
背景には、賃金上昇を大企業が吸収したこと、雇用保護制度により解雇および再就職の容易性が損なわれ労働市場の流動性が失われたこと、化学・情報通信等の輸出産業が中国特需などで好調であるのに対して、中小企業や内需産業では中国の低賃金生産拠点進出に押され、設備投資や消費が減り雇用無き成長現象が深化したことがある。その結果、輸出主導型の経済構造や高コスト低効率体質の影響で輸出部門と内需部門が明暗を分け、大学新卒者の雇用需要を狭めたのである。
さらに、大手企業グループ(上位30)・公営企業・金融機関など就業人気の高い部門が中途採用を増やしたことがある。ちなみに当時の統計よると、全雇用に占める中途採用比率は97年の40・7%から02年には81・8%へと倍増しており、中途採用の依存度が高まっている。そのことは裏を返せば大学卒業者の就業機会を失業者と転職者が奪ってきたと言える。こうした状況の中で08年に起こったリーマンショックによって、金融業、証券業などの人気職種の雇用は激減した。
若年層の失業率は依然深刻である。13年第4四半期の失業率を見ると、15歳~19歳は10・3%、20歳~29歳は7・8%と全体の失業率2・8%に比べ2・8~3・6倍で高止まりしたままである。つまり、大卒者などの新規労働者にとっては国内労働市場が限界市場になっており、大学教育が有利な就職につながると言う神話は既に消え去り、むしろ教育費負担の重さが子供の数を抑制し、出生率低下の要因となるばかりでなく、内需の抑制をもたらすと言う悪循環となっている。
雇用労働部が12年4月に発表した「2011~20 中長期人材需給見通しと政策課題」では、20年までの短大卒以上の新卒者に対する労働需要見通しは約416万人で、供給見通し約466万人より50万人も少なくなると予想し、大卒者が過剰供給されている現実がある。
こうした状況の中で、韓国政府は海外留学と海外就業を積極的に支援している。海外留学政策は1955年に文教部が「外国留学資格試験及び設定に関する規定」を制定したのを皮切りに留学支援を実施してきたが、実際は70年代後半から徐々に本格化することになる。77年の国費留学生制度、79年の海外留学に関する規程の制定により事実上の留学門戸を開いた。その後81年に留学資格試験制度を私費留学生に免除したが、86年には私費留学試験が制定され、その後廃止されるなど緩和と規制が繰り返された。最終的に94年に留学試験が廃止され、00年に海外留学が全面的に自由化された。こうした留学送り出し政策によって2000年代初には15万人程度であったものが11年には26万人とピークを迎えている。
海外就業支援では、これまでバラバラに行ってきた支援体制を統合し、韓国雇用労働部と韓国産業人力公団が主管する海外就職支援策K―Moveプロジェクトを立ち上げ、各国の企業に最適化させた人材を育成するとともに、韓国の若者のために海外就職先を見つける支援を実施している。それ以外、表に掲げた公共機関による支援や各大学で行う留学支援制度、さらには留学斡旋の専門民間企業などが積極的に海外留学事業を展開している。創造経済を牽引するグローバル人材を海外で育成することは朴政権の人材育成の一環であり、海外就業の促進も労働供給過剰対策の一助となり、就業パラダイムの転換をもたらすであろう。今後彼らが海外コリアンネットワーク強化に寄与することが期待される。