◆ミスマッチが生む遅い就業◆
1990年代末に、「IMF危機」と呼ばれたアジア金融危機によって大混乱に陥っていた韓国は、2000年代初頭になると、「IMF早期卒業」がいわれ、早いスピードで危機から抜け出した。しかしながらその後、2000年代前半以降の状況をみると、韓国経済は決して良い方向に向かっているとはいえない。特に若者をめぐる労働市場の現実は非常に厳しい。一言で表現すると「遅いスタートライン・早いエンドライン」という現実である。
まず、「遅いスタートライン」、言い換えれば、大学を卒業し労働市場に参入する時期が非常に遅いという状況をみてみよう。その状況を表しているのが、韓国における若者の低い就業率(当該年齢人口のうち実際に就業している者の割合)である。2011年の統計によれば、15~24歳の就業率は23・0%である。これは、先進諸国のなかで低いといわれる日本(39・1%)よりもさらに低く、OECD最低の水準である(OECD平均39・1%)。国内の推移についてのデータをみると、90年代末のIMF危機に過去最低を記録した就業率は(98年に15~24歳で27・1%、15~29歳で40・6%)、2000年代に入り若干回復するが(00年に15~24歳で29・4%、15~29歳で43・4%)、その後徐々に下落しつつ、最近のデータでは、IMF危機の時の数値を下回るようになっている(11年に15~24歳で23・0%、15~29歳で40・5%)。
以上のような若者の低い就業率は、8割前後という高い大学進学率によってある程度は説明できるが、それより大きな要因として、20代の多くがよりよい就職のために、大学を卒業してから、あるいは卒業を延長してその準備に取りかかっていることが指摘できる。前者の卒業後に就業準備中の者を「就職準備生」、後者の卒業を延長して学生の身分で就業準備中の者を「NG族」(No Graduationの略語)と呼ぶ。11年現在、統計上の失業者数は34万人となっているが、「就業準備生」は64万人とされ、その数を合わせ「青年失業100万人時代」と言われたりする。さらに、全国に100万人ほどいるとされる「NG族」まで含むと、「青年失業200万人時代」の到来といっても差し支えない状況である。
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