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2014/09/05

<オピニオン>韓国福祉国家を論じる 第7回 女性の年金問題と課題                                       東京経済大学経済学部 金 成垣 准教授

  • 東京経済大学経済学部 金 成垣 准教授

    キム・ソンウォン 1973年韓国生まれ。延世大学社会福祉学科卒業、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会学)。東京大学社会科学研究所助教などを経て現在、東京経済大学経済学部准教授。

◆高齢者の貧困により重点を置いた改革議論を◆

 OECDの調査によると、韓国の高齢者の相対的貧困率は47・2%で、OECD諸国(平均12・8%)のうち極端に高く、ワースト1を記録している。なかでも、男性より女性の貧困率の高さが著しく、50%を上回っている。その背景には、韓国の年金制度、つまり国民年金が抱えている「無年金・低年金」問題、とくにそこにおける男女格差の問題が存在している。韓国の国民年金全体にみられる「無年金・低年金」問題については、前回取り上げているので、今回は主にそこにおける男女格差の問題に注目してみたい。

 韓国の国民年金における男女格差の問題は、現在の年金受給者の状況をみると明確にあらわれる。12年現在、国民年金の受給者は184万人(男性113万人、女性71万人)である。これは全体としては、65歳以上人口の30・7%にあたる低い受給率であるが、ここで強調したいのは、そのなかにみられる男女格差である。つまり、男性の受給率は45・5%であるのに対して女性の受給率はその半分も満たない20・3%と低い水準である。問題はそれだけではない。受給者だけに限定してその平均受給額を比較してみると、男性は32万ウォン、女性は19万ウォンである。男性の受給額も非常に低いが、女性の場合はさらに低く、その6割程度となってしまう。

 こうした国民年金における男女格差は、現在の受給者状況だけではない。将来の年金受給を予測できる加入者状況をみても、男女格差は著しい。主婦や学生などの非経済活動による未加入や保険料の未納・滞納の状況を考慮して全体の加入者状況をみると、加入対象者全体(18~59歳)の51・8%という低い加入率を示している。将来的に5割以上の人々が無年金者になる可能性があるわけだが、それを性別でみると、男性が42・0%、女性では59・0%と、その格差は17%まで広がっている。さらにいえば、女性の場合、年金受給者になったとしても、現役時代における短い雇用期間や低い所得水準のため、低い給付額しか受け取れないことが予測されている。以上のようにみると、韓国の国民年金は、全体として「無年金・低年金」問題が存在している中、その問題は男性より女性により著しくあらわれている。


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