◆雇用安定化と子育て負担軽減を◆
周知の通り、韓国は世界第1位の少子化国である。それを計る出生率(合計特殊出生率=1人の女性が一生に産む子供の平均数)をみると、1970年に4・5だったのが、90年には1・6まで急激に下がり、その後、急激な下り方は緩和されたものの、持続的な低下傾向には変わりはなかった。2002年には1・17とOECD(経済協力開発機構)諸国のうち最低国となり、05年には1・08と過去最低を記録した。その後やや持ち直したものの、大きな上昇はみられず、13年現在、1・19と、13年間連続でOECDワースト1位を記録し続けている。
このような韓国の少子化についていかに説明できるだろうか。一般的に、20世紀における急速な少子化は、政府の強力な人口政策によるものであるが、21世紀に入ってからの少子化は、子育て世帯となる若年層の生活不安がそこに深く関わっているとされる。ここでは、21世紀に入ってからの特に後者の若年層の生活不安に着目して、少子化問題についてみてみたい。
韓国における若年層の生活不安についてはさまざま側面からアプローチすることができるが、大きく次の3つの側面に分けて考えてみたい。
第1に、何よりまず、近年の厳しい雇用情勢のなかで、多くの若者が初めて就職するのは20代後半以降という遅い時期となり、それに伴い結婚年齢が遅くなってしまっていることである。13年の統計によれば、韓国の15~29歳の就業率は39・7%である。これは、日本(12年53・7%)より遥かに低く、OECD(12年平均50・9%)の中では最低水準である。国内の推移をみると、この10年間で5・4ポイントも下落している(04年45・1%)。ちなみに年齢別の就業率をみると、20代前半までは5割を切っており、20代後半で初めて5割を上回り、30代でやっと7割を超える。大半の人が20代後半あるいは30代になって初めて社会人になるという状況が伺える。なぜこのような状況になっているかについては、当紙14年7月のコラムを参照されたいが、ここでは、以上のような遅い就職の帰結として、初婚年齢が遅くなっていることを指摘しておきたい。14年の統計によれば、男性の初婚年齢は32・2歳(日本12年30・5歳)、女性は29・6歳(日本12年28・8歳)となっている。この20年間で4歳以上遅くなっているという。以上のような遅い就職年齢また遅い結婚年齢という状況のなかで、当然ながら初産年齢が上がってしまい、それが少子化をもたらしているのである。
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