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2015/02/06

<オピニオン>韓国福祉国家を論じる 第12回 新旧の社会的リスク                                       東京経済大学経済学部 金 成垣 准教授

  • 東京経済大学経済学部 金 成垣 准教授

    キム・ソンウォン 1973年韓国生まれ。延世大学社会福祉学科卒業、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会学)。東京大学社会科学研究所助教などを経て現在、東京経済大学経済学部准教授。

◆近年の状況を包括的に把握し議論を◆

 最近、テレビ番組、新聞や雑誌の記事、またアカデミックな書籍や論文など様々な領域で、韓国社会が直面している危機的状況を取り上げることが多い。その危機的状況を示すキーワードとして特に注目されているのが、少子高齢化の急進展、外国人労働者や移民者の増加、経済格差の深化という問題である。

 2000年代以降、韓国社会では、経済のグローバル化や新自由主義的な政策基調の拡大によって、少数の勝ち組を巡る超競争社会が生まれた。特に若者の間にみられたことであるが、その超競争社会の中で晩婚化や非婚化が急速に進み、それに伴う出生率の低下と高齢化の進展が大きな社会問題となった(「少子高齢化の急進展」)。そのような中、超競争社会の底辺を成す非熟練の労働力市場にあらわれた労働力不足の問題、また急速な少子高齢化による生産年齢人口の減少や家族機能の弱体化が懸念され、外国人労働者や結婚移民者を積極的に受け入れるようになった(「外国人労働者や移民者の増加」)。しかし、これによって問題が改善できたかというと、むしろ「勝ち組VS負け組」あるいは「中核VS底辺」などといったいわゆる二極化による格差問題がますます深刻化しつつあるのが現状である(「経済格差の深化」)。

 以上のような状況の中で近年、韓国社会の「生きにくさ」が浮き彫りになっており、その「生きにくさ」の実態や原因、またその改善策などについて真剣に議論すべき時期であると思われる。確かに最近、それらを巡る多様な議論が活発に行われているが、韓国社会が置かれている危機的状況を的確に捉えているかというと必ずしもそうとはいえない。


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