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2015/03/06

<オピニオン>韓国福祉国家を論じる 第13回 高齢者雇用政策                                       東京経済大学経済学部 金 成垣 准教授

  • 東京経済大学経済学部 金 成垣 准教授

    キム・ソンウォン 1973年韓国生まれ。延世大学社会福祉学科卒業、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会学)。東京大学社会科学研究所助教などを経て現在、東京経済大学経済学部准教授。

  • 韓国福祉国家を論じる 第13回 高齢者雇用政策

◆社会保障政策と合わせ問題改善を◆

 2013年現在、韓国の高齢化率は12・2%であり、同年日本の24・1%に比べるとはるかに低い。しかしながら韓国が、これまで世界でもっとも早いスピードで高齢化が進んできた日本より、さらに早いスピードで高齢化社会に向かっていることはよく知られている。この超高速ともいえる高齢化の進展のなかで、近年韓国で注目されているのが、高齢者の雇用問題である。そこで、国の政策として04年に始まった「老人就労事業」について考えてみたい。

 老人就労事業は04年に、65歳以上の高齢者を対象に、働く機会を提供するために保健福祉部(日本の厚生労働省に当たる)の管轄でスタートしたものである。事業展開の状況を簡単にみると、04年には政府予算169億ウォン、政策目標2・5万件の雇用創出を掲げてスタートし、05年には同事業の総括担当機関として「韓国老人人材開発院」を設立し、本格的に事業を実施・拡大してきた。

 その後、事業拡大が順調にすすみ、10年後の13年には24万件の雇用創出を目標に2285億ウォンの政府予算が投入され、事業展開されている。

 事業内容は表にまとめたように、市場進入型(民間部門)と社会貢献型(公共部門)があり、さらに市場進入型には人材派遣型、市場型、創業型があり、社会貢献型には公益型、教育型、福祉型がある。

 この10年間、活発に展開されてきた老人就労事業の成果や限界に関しては、これまで多様な調査報告書や研究論文が発表されてきた。成果についていえば、所得の確保による貧困率の減少効果を指摘する研究もあれば、働くことによる健康状態の向上やそれによる医療費の削減効果を指摘する研究もある。


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