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2015/04/03

<オピニオン>韓国福祉国家を論じる 第14回 少子化対策を考える                                       東京経済大学経済学部 金 成垣 准教授

  • 東京経済大学経済学部 金 成垣 准教授

    キム・ソンウォン 1973年韓国生まれ。延世大学社会福祉学科卒業、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会学)。東京大学社会科学研究所助教などを経て現在、東京経済大学経済学部准教授。

◆財政負担に向け環境整備を◆

 2000年代後半以降、韓国政府が最も力を入れている政策の1つが少子化対策である。その対策はいかに評価できるのか。そもそも結婚をするかしないか、子どもを産むか産まないかという問題は、多面的で複合的な要因が複雑に絡み合っている。それゆえ、少子化に歯止めをかけようとする対策が打たれたとして、それによってすぐに効果が出るとは考えにくく、そのため、対策の効果についての診断も簡単にはできない。

 ただし、韓国よりはるかに長い間、少子化対策を推進してきた日本の経験から、今日の韓国の少子化対策を診断するうえで重要な判断基準を見出すことができると思われる。日本では1990年代初頭以降、様々な少子化対策が展開されてきたにも関わらず、この20年間の状況をみると、目立つ効果はみられず、依然として少子化問題が日本社会の最重要課題として注目されつづけている。そこで今回は、その「反面教師」ともいえる日本の少子化対策をみることによって、韓国への示唆点を考えてみたい。

 これまで日本における少子化の要因としては、未婚化と晩婚化の進行と既婚夫婦の出生率の低下という2つの点が指摘されてきた。第1に、未婚化・晩婚化の進行という要因を解消するための政策については、所得保障より就労支援の面に焦点が置かれてきた。もちろん、09年に第2のセーフティーネットという名のもとで、従来の社会保障から排除されていた若年層の失業や貧困問題に対応するために、生活資金を支援するいくつかの制度が導入された。ただし、それらの制度が主に、期限付きの給付制度や一定の期間内での返済を条件とした貸付制度から成り立っていることを考えれば、所得保障としての十分な機能を備えているとはいいにくい。

 第2に、既婚夫婦の出生率の低下という要因を解消するための政策については、子育て・教育コストの軽減政策より仕事と家庭の両立支援の方に政策の重点がおかれてきた。もちろん、09年に新しい制度として子ども手当や高校授業料無償化など、これまでほとんど行われてこなかった子育て・教育コストの軽減が打ち出されたことは注目に値する。しかしそれらの制度は、財源確保の問題などのため批判の声が高まり、導入後数年経たずに縮小・廃止されてしまっている。要するに、これまでの日本の少子化対策は、「未婚化・晩婚化の進行」という要因に対しては就労支援を、「既婚夫婦の出生率の低下」という要因に対しては仕事と家庭の両立支援を中心に展開されてきたといえる。

 さて、以上のような少子化対策の特徴は何を意味するか。それを探るための1つの手がかりとして、少子化対策における給付と規制という2つの政策手段について取り上げてみたい。少子化対策の手段としては、給付と規制の2つのタイプが考えられる。給付的手段による政策は、現金給付や現物給付など家族に対する経済的または物質的な支援のかたちで行われるものであり、規制的手段による政策は、家族内の関係あるいはそれと関わる諸環境的要因に関する規制など、家族の安定や保護のためのルール作りの形で行われるものである。全体としての少子化対策は、基本的にこの給付的政策と規制的政策の組み合わせによって成り立っている。


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