◆地域住民の多様なニーズに対応を◆
韓国の都市人口比率は87%でOECD加盟国のうち最高水準である。日本も78%とOECD第4位を記録している。150万人以上の大都市に居住している人口比率は、韓国と日本がそれぞれ68・4%と65・8%で、世界で最も高い。
何より韓日両国では政治、経済、文化の中心的な役割を果たす東京やソウルなど、人口1000万人以上のいわゆるメガシティーが存在していることが大きな特徴といえる。
福祉国家を形成し、それを維持・発展していく上で、中央政府の役割はもちろん地方政府の役割も重要である。地方政府は、中央政府の政策を執行・管理する役割だけでなく、独自的な政策を策定し地域住民の福祉水準を向上させる役割を果たしてきた。またその成果をもって中央政府の政策構想や樹立に大きな影響を与えることもあった。
特に大多数の人口が都市地域に居住する日本や韓国においては、政治や経済、文化の中心的なメガシティーの独自的な政策の策定と執行が、国家全体の政策の展開に非常に大きな影響を及ぼしてきた。
例えば、世界最大の人口密集都市である東京都では、1960年代後半に、福祉国家の理論的基盤であった「ナショナル・ミニマム」を適用した「シビル・ミニマム」という独自的な政策構想を定め、日本の福祉国家の発展に大きな役割を果たした。この「シビル・ミニマム」についての議論やそれに基づく政策展開は、当時としてはそれほど長続きしなかったが、近年、「ローカル・オプティマム」(地域ごとの最適状態)といった形で復活の状況もみられている。
一方、ソウル市をみると、90年代後半以降、民選市長制が導入され、独自的な政策が樹立・執行されるようになった。現市長である朴元淳氏によって始まった「市民福祉基準」が代表的な例である。「市民福祉基準」は、所得、住居、医療などの領域において、ソウル市民の福祉の最低基準と適正基準を提示したものである。この計画に基づいて、例えば、公的扶助を補完した「ソウル型公的扶助制度」を樹立し、また公共保育施設や高齢者施設などをも大幅拡充した。これが中央政府および他の地方政府の政策に対して大きな影響を与えている。
地方政府の役割は、近年の社会的リスクの構造変化にともない、その重要性をさらに増していると思われる。過去の伝統的な福祉国家は、高齢、医療、産業災害、失業などのいわゆる「古い社会的リスク」に対応すべく、中央政府が全国民を対象として一律的な所得保障制度を構築してきた。
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