◆個別ニーズに応じ貧困脱却促す◆
日本の生活保護にあたる韓国の国民基礎生活保障(以下、基礎保障)は、2000年に導入された。何らかの理由で生活困窮に陥った人々のための、いわゆる「最後のセーフティーネット」となる制度である。今年7月に同制度の大きな改正が行われた。
基礎保障においては、労働能力の有無を問わず、生活困窮であれば誰でも最低生活を保障されることとなっている。その保障の基準や種類および方式は以下の通りである。
まず、その生活困窮をいかに判定するかについては、次の2つの基準が設定されている。第1に「所得認定額基準」である。すなわち世帯構成員の労働所得(「所得評価額」という)と財産(「財産の所得換算額」という)の合計が、国の定める「最低生計費」以下の場合に、同制度の受給対象になるという基準である。
第2に「扶養義務者基準」である。これは「扶養義務者」がいないか、いても「扶養能力」がない場合に、同制度の受給対象になるという基準である。
「扶養義務者」の範囲についていえば、これまでいくつかの法改正があったが、現在は、同居しているか否かは問わず一親等(父母、子)およびその配偶者となっている。この所得認定額基準と扶養義務者基準の2つの基準を同時にクリアした場合、生活困窮と判定され、基礎保障の給付対象となるのである。
次に、基礎保障の給付には、次の7種類から構成されている。現金給付のかたちで定期的に支給される「生計給付」と「住居給付」、現物給付のかたちで支給される「医療給付」と「教育給付」、また一時金として支給される「出産給付」と「葬祭給付」、そして自立支援プログラムを提供する「自活給付」である。
最後に、基礎保障の給付は「統合給付」という方式で行われている。上記の7種類の給付を1つに統合して、同制度の給付対象になればすべての給付を行い、対象にならなかった場合は1つの給付も行われない。これは、「オール・オア・ナッシング(all or nothing)の原則」ともいわれている。
15年7月の改正によって何が変わったかというと、最も大きいのが給付方式である。これまで7種類の給付を「オール・オア・ナッシングの原則」で給付していたのを撤廃し、給付対象者の状況に合わせて「生計給付」「住居給付」「医療給付」「教育給付」などを個別的に行うこととなった。いうならば「統合給付」から「個別給付」への転換である。
「統合給付」から「個別給付」への転換が行われたのは、従来の給付方式が、国民の貧困問題に対して個別的なニーズに対応できず、問題の改善や解決に適切に機能できなかったこと、また「オール・オア・ナッシングの原則」のため、いわゆる「貧困からの脱却インセンティブ」が弱かったことに対する反省があった。言い換えれば、今回の改正は、貧困層の個別的なニーズに対応し、同時に貧困からの脱却を促すために行われたのである。
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