◆経営者自ら率先垂範して見本示せ◆
この度、韓国の中堅企業であるハンズ・コーポレーションと承鉉蒼(1977年生まれ38歳)会長をNHK BS1「島耕作のアジア立志伝」が、取り上げるとのことで取材を受けた。これまでに紹介されたアジアの経営者は18名であるが、韓国の経営者の紹介は今回が初めてである。放送予定は、2015年1月16日(金)21時でタイトルが「競争から協走へ」となっている。このハンズ・コーポレーションと承鉉蒼会長の分析を通じて日韓を超えた新しいアジア時代の企業と経営者のあり方を考える。
ハンズ・コーポレーションは、自動車のホイール生産で韓国1位(シェア48%、国内売上60%)、世界5位である。売上高500億円、社員1800人、生産量1200万個。株主は、承鉉蒼会長が持ち株比率66・86 %、鶴山文化財団(会長の祖父が設立)が同23・29 %、車熙善氏(会長の母)が同9・85 %。一族で持ち株100%を占めており、まさしく同族企業の典型である。承会長は、高麗大経済学部卒業、徴兵、ワシントン大ビジネススクール修了を経て一般企業に就職後、04年27歳で同社に入社した。06年副社長、09年社長、12年会長に就任した。このような速い昇進の理由は、創業者である父の承建鎬氏が89年リビアでの航空機墜落事故により死去したため、後継者の育成が急がれたからである。事故当時、父は45歳というあまりにも早い死であったし、承会長も若干12才・小学6年生であったことからその悲しみと衝撃は計り知れなかったであろう。
同社の経営スタイルの特徴は、3つに集約できる。1つ目は、34年間ホイールだけに集中するとともに経営陣の結束と職人魂で堅実に経営しているということ。その背景には、アジア通貨危機時の経験がある。東和合板株式会社は、故・承建鎬氏が70年に創立し、材木業を始めた。70年代の韓国では、輸出ブームと建築ブームであったため、合板が飛ぶように売れ、材木業で成功した。75年には社名を東和商協に変更し、80年代に入ってからは二輪車のホイール生産業に転業した。89年からは自動車のホイール生産を開始した。東和商協は、高価格・高品質製品にこだわったため大量生産できなかったが、利益率は高かった。98年アジア通貨危機時、ライバルメーカーは倒産していったが、東和商協は社員全員で結束し、一丸となって同社を守り切った。その結果、圧倒的なトップシェアであったホイールメーカーが倒産したこともあり、東和商協がトップシェアとなり、現在に至っている。12年には、職人魂を象徴する「手作り」という意味でハンズ・コーポレーションに社名を変更した。
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