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2015/03/13

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第26回 北東アジア域内外経済連携による潮流変化                                                    多摩大学経営情報学部 金 美徳 教授

  • 多摩大学経営情報学部 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部および大学院経営情報学研究科(MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所、三井グループ韓国グローバル経営戦略研究委員会委員などを経て現職。

◆韓日企業は世界経済の動き直視せよ◆

 北東アジア経済圏の7つ目の経済圏であるモンゴル経済圏の実態を分析する。モンゴル経済圏(中国内モンゴル自治区・モンゴル、3000万人)では、中国が内モンゴルの資源供給地としての重要性に加え、隣国のモンゴル、ロシア両国と長い国境線(4200㌔㍍)を隔てて接している地政学的重要性に鑑み、内モンゴルを対モンゴル、ロシア両国の経済貿易拡大の橋頭堡と位置づけている。内モンゴルは、近年豊富な石炭などエネルギー・鉱物資源を背景に経済が急成長を遂げており、特に2002年以降は中国省別トップの高成長率を維持している。また、07年に発表された「東北地区振興計画」により内モンゴルの東部(フルンボイル市・興安盟・通遼市・赤峰市・シリーンゴル盟)が、同計画の対象地域に編入された。これは、内モンゴル東部を東北地域に組み込むことによって、中国経済発展への牽引役として期待していることを意味する。さらには、モンゴル経済圏を北東アジア経済圏にリンクさせたいという大きな地域発展戦略も見え隠れする。こうした中、内モンゴルは、隣接する国内の8省・自治区と協力・連携しつつ、北隣のモンゴル、ロシア両国への企業進出や経済交流の拡大を図る、いわゆる「南連北開」戦略を展開している。

 現地調査で感じたことは、内モンゴルが、モンゴルの天然資源をストローで吸い込むが如く、飲み込み始めているということだ。モンゴルは、3000カ所に及ぶ鉱山がある鉱物の宝庫である。経済発展のため鉱業を重視し、鉱産物の輸出拡大を目指し、投資環境整備の施策・鉱業法の整備、地質情報提供の整備などを行い、積極的に外資導入を進めている。主な鉱物資源は銅・モリブデン、非金属鉱物資源はホタル石、その他に金・錫・タングステンなどである。因みにモリブデンは、各種合金、染料、潤滑用のほか、電子工業などでもハイテク材料として使われており、世界的に需要が伸びている。ホタル石は、望遠鏡やカメラ用レンズのような高級光学レンズ材として用いられている。タングステンは、自動車部品などの製造過程で金属を削る工具に欠かせない。また、液晶テレビのバックライトに使う冷陰極蛍光管の部品や、砲弾や戦車にも用いられている。

 特に注目されるのが、南ゴビ地方の世界級のオユトルゴイ銅鉱床とタバントルゴイ炭田(埋蔵量50億㌧)である。資源輸送は、中国がゴビ砂漠の南部と「チャイナランドブリッジ輸送回廊 (中国を横断し連雲港に繋がる鉄道)」を道路で繋げ、トラックで石炭を運んでいる。しかしトラック輸送は、環境問題と輸送量の限界から2カ所に鉄道を引く計画が浮上している。これに対してモンゴルは、鉱山・石炭開発が活性化し、資源輸送も捗ると興味を示す半面、鉱物をすべて中国に吸い取られてしまうのではないかと警戒感を露にしている。モンゴルは、1992年に社会主義を放棄して資本主義体制を確立し、これまでソビエト連邦の影響下にあったことやロシアからのエネルギーや経済の依存などにより思うように自立ができなかった。


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