◆韓日はアジアのインフラ需要取り込め◆
アジア・ユーラシアダイナミズムをビジネスチャンスとして活かすためには、世界潮流を読み解き、北東アジアの新時代を築くという視点が大切である。そこで世界経済、国際秩序、アジア新時代に影響を及ぼすであろうアジアインフラ投資銀行(AIIB)について分析し、韓日企業がいかにこの膨大なアジアのインフラ需要を取り込むかを考える。前回の概要に続き、今回はAIIBに対する日米のスタンスとAIIBの問題点を分析する。
日本のスタンスは、AIIBの創設メンバー資格が得られる申請期限の今年3月31日に安倍首相が、「焦る必要はない。このままでいくぞ」と述べ、参加判断の先送りを財務官と外務審議官に指示した。安倍首相が参加を見送った理由は、財務省と外務省から以下のメモ・報告があったからである。「参加に慎重な米国と緊密に連携」、「日本の最初の出資金は15億㌦(1800億円)程度」、「英国が参加する確たる情報はない」、「主要7カ国(G7)からの参加は絶対にない」。また、麻生財務相は、参加を見送った理由を記者会見(4月9日)で以下のように述べた。「AIIB参加国は最終的にいくつになるのか知らないが、出資額の総額も中身もわからないので、今の段階で考えているわけではない。何回も同じことを言っているので、もう飽きてきたけど、やることは1つなんですよ。お金を貸すというのは、返ってこないお金は貸せない。返ってこないお金はやるっていうんだからね」、「AIIBには透明性がないので、世界はついていかないだろう」。日本は、以上の理由と判断から参加表明をしなかった。しかし結果は、予想に反し、英国をはじめとするG7の4カ国(英独仏伊)が参加し、創設メンバーも57カ国となった。
一方、米国のスタンスは、AIIBに参加しないだけでなく、同盟国にも参加させないとしてきたが、主張のトーンが少しずつ変わりつつある。シーツ財務次官は、「米国は国際金融を強化する新しい多国籍機関を歓迎する。世界銀行(WB)やアジア開発銀行(ADB)などの既存の国際的金融機関と共同融資ができれば、高い質の基準を維持することができるだろう」と述べた。4月6日リブキン国務次官補は、東京で記者会見し、「アジアには巨大なインフラファイナンスのニーズがある」と述べた上で、米国がAIIBに反対しておらず、積極的に関与していく方針であることを明らかにした。ただ「今、米国が参加することは考えていない」と言明した。日本の参加についても「主権に則って(自主的に)判断すべきだ」と述べた。米国は、日本にAIIBへの参加を見送るよう圧力をかけたと見られているが、今後の最悪のシナリオは米国が日本に参加するよう圧力をかけることである。日本政府は、このような最悪のシナリオを避けるとともにAIIBへの牽制策として、2020年までの今後5年間でアジアのインフラに13兆円を投じると発表した。ADBやODA(政府開発援助)を通じた融資などを行うようである。しかしながら日本の財政にそのような余裕があるか否かは疑問である。現時点の中期財政試算では、20年度の基礎的財政収支は▲9・4兆円、GDP比▲1・6%とされている。AIIBや中国への牽制のために日本の財政再建が遅れるようなことになれば本末転倒である。
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