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2015/08/14

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第31回 AIIBとグローバルビジネストレンド④                                                    多摩大学経営情報学部 金 美徳 学科長

  • 多摩大学経営情報学部 金 美徳 学科長

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部事業構想学科長および同大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

◆変化見極め環境適応力身に着けよ◆

 アジアインフラ投資銀行(AIIB)について前回までの「①AIIBの概要」、「②AIIBに対する日米のスタンスとAIIBの問題点」、「③既存の国際金融機関の問題点」に続き、今回は中国の思惑を分析する。

 中国の思惑は、3つが考えられる。1つは、「シルクロード経済圏構想」の実現を図り、ユーラシア大陸での影響力を拡大すること。「シルクロード経済圏構想」とは、陸と海の2つがあり、中国を起点に中央アジアから欧州に至る「シルクロード経済圏ベルト」と、中国沿岸部からアラビア半島までを結ぶ海上交通路「21世紀の海のシルクロード」を指す。両者をまとめて「一帯一路」と呼ぶ。具体策としては、エネルギーや食糧の輸送ルートの確保やインフラ輸出の促進・拡大を図る。

 2つ目は、中国通貨・人民元の世界基軸通貨としての地位を獲得すること。中国は、インフラ外交を「中国版マーシャル・プラン」と呼んでいる。マーシャル・プランは、第二次世界大戦で被災した欧州諸国のために米国が推進した復興援助計画で提唱者の国務長官ジョージ・マーシャルの名を冠してこのように呼ぶ。米国は戦後、西欧の復興を援助し、西欧諸国は流入した多額のドルを使って米国から物資を買い入れた。そしてドルが世界に広がり、ドルの基軸通貨化が加速した。これを模倣した中国のインフラ外交「中国版マーシャル・プラン」もアジアの貿易や投資で人民元の使用を増やし、人民元を国際通貨に育てる戦略である。

 3つ目は、中国の世界一豊富な外貨準備高を活用して、新たな国際金融システムを構築すること。中国の外貨準備高は、3兆8430億㌦で世界トップシェア33%を占めている。因みに外貨準備高の世界2位は、日本1兆2511億㌦(世界シェア11%)である。本質的には、米英主導の戦後の国際金融の枠組み「ブレトンウッズ体制」に対抗する新たな体制を築くことである。「ブレトンウッズ体制、別称IMF(国際通貨基金)体制」とは、1944年7月、連合国44カ国が、米ニューハンプシャー州ブレトンウッズに集まり、第二次世界大戦後の国際通貨体制に関する会議が開かれ、IMF協定などが結ばれた。その結果、国際通貨制度の再構築や安定した為替レートに基づいた自由貿易に関する取り決めが行われた。具体的な構築策としては、外貨準備の運用を米国債偏重から新興国へのインフラ投資へと拡大し、人民元取引を増大させ、人民元マーケットを拡大することである。最終的には、「非米国」、「脱ドル」の経済圏形成を狙っていると見られる。

 2013年10月に初めて習近平主席によってAIIB構想が提唱された時、世界は唐突なことに大きく動揺したが、その布石は10数年前からあった。一つは、01年6月に設立された上海協力機構(SCO)である。SCOは、国際テロ・民族分離運動・宗教過激主義問題への共同対処、経済や文化など幅広い分野での協力強化を目的に中国・上海で設立された。加盟国は、中国、ロシア、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの6カ国である。ただ準加盟国が28カ国(モンゴル、インド、パキスタン、イラン、アフガニスタン、ベラルーシ、スリランカ、トルコ、トルクメニスタン、CIS・独立国家共同体、ASEAN)に上ることから、加盟国6カ国と準加盟国28カ国を合わせて34カ国に影響力を及ぼしている。


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