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2015/06/19

<オピニオン>転換期の韓国経済 第64回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 転換期の韓国経済 第64回

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 転換期の韓国経済 第64回

◆韓中FTAをどう見るか◆

 今年6月1日、韓国政府と中国政府が自由貿易協定(FTA)に正式に署名した。国会で批准されれば、年内にも発効する見通しである。KOTRA(大韓貿易投資振興公社)ではチャイナデスクを設置し、中小企業を対象に同FTAの活用を支援する体制を整えた。景気の低迷もあり、韓中FTAに対する期待が高まっているが、その発効が経済の活性化につながるのであろうか。

 まず、これまで締結したFTAと比較すると、韓中FTAの自由化水準は総じて低い。10年以内に関税を撤廃させるノーマルトラックは、韓国側が品目ベース79・2%、輸入金額ベース77・2%、中国側が品目ベース71・3%、輸入金額ベース66・2%となった。このうち即時撤廃は、韓国側が品目ベース49・9%、輸入金額ベース51・8%であるのに対し、中国側は品目ベース20・1%、輸入金額ベース44・0%である。

 ちなみに韓米FTAの場合、10年以内に関税が撤廃される自由化率(品目)は米国側が99・2%、韓国側が98・2%である。自由化率が低くなった結果、10年間の実質GDP押し上げ効果(韓国の対外経済政策研究院の試算)は12年の交渉開始時点で予想された2・3%を大幅に下回る0・96%になった。低い自由化率が示唆するように、両国にとって無理のない内容となった。得るものが多くない一方、失うものも少ないといえる。

 韓国は重要農作物の多くを関税引下げ対象品目から除外することに成功した一方、中国に対して、一部の石油化学製品、自動車、溶融亜鉛メッキ鋼板などを除外、また、エチレン、LCDパネル、一部の冷延鋼板の関税撤廃を10年以内にすることを認めた。

 この点で、EU(欧州連合)や米国とのFTAでは、韓国が自動車分野で関税撤廃(乗用車は3~5年内、自動車部品は即時撤廃)を認めさせた代わりに、農水産物分野で譲歩することになったのとは異なる。

 中国とのFTAで自動車を除外にした理由には、①中国での現地生産比率が高いこと、②中国で生産された海外メーカーブランド車の韓国への輸出を警戒したこともある。


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