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2015/07/24

<オピニオン>転換期の韓国経済 第65回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 転換期の韓国経済 第65回

◆中国市場失速の現代自◆

 現代自動車にとって、中国は最大の市場である(米国、韓国がそれに続く)。同社の中国事業は2002年の北京現代汽車の設立(北京汽車と合弁、出資比率は50%ずつ)に始まる。これまで現地生産能力を拡張しながら、比較的順調に販売を伸ばしてきたが、最近になり販売が急減している。

 15年上半期の北京現代の販売台数は前年同期比▲7・8%となった(上図)。とくに5月前年同月比▲12・1%、6月▲30・5%と、足元で販売が著しく減少している。販売の急減を受けて、現代自動車は韓国と中国で減産を実施し始めた。現代自動車の販売減少の影響もあり、韓国の中国向け自動車部品輸出額は13年の前年比25・7%増、14年の8・8%増から15年上半期は▲3・6%となった。

 現代自動車の販売が減少した要因として、まず、中国の自動車市場全体の縮小がある。同国ではリーマンショック後に景気刺激策の一環として、09年1月から「小型車減税政策」(10年末まで実施)、09年3月から「汽車下郷プロジェクト」が実施された。これにより、自動車販売台数は09年、10年に30%以上の高い伸びを記録した。

 急増した反動により、11年以降は増勢が弱まったものの、総じて安定的に伸びてきた。14年は住宅価格の下落や企業業績の悪化などの影響により、13年の伸びを下回る6・9%増となった。

 15年も底堅く推移すると予想されたが、4月以降3カ月連続で前年割れになるなど急ブレーキがかかり、上期は1・4%増にとどまった。

 これには景気の減速が影響している。実質GDP成長率は14年7・4%になった後、15年第1四半期(1~3月)7・0%、第2四半期(4~6月)7・0%と前年の成長率を下回った。不動産市場を中心にした投資の鈍化により商用車の販売不振が続いていることに加え、最近では景気の先行き不透明感の高まりや株価急落の影響で、乗用車の販売も落ちている。

 こうした市場全体の縮小以外に、現代自動車の販売減少要因には、①中国地場メーカーによる低価格攻勢(主としてSUV分野)、②在庫処分を進める欧米メーカーによる値下げ、③日系メーカーの巻き返し(新車投入、値下げ)、④現代自動車のモデルチェンジの遅れなどが指摘できる。

 北京現代は今年3月から新型LFソナタ(中型車)の販売を開始したが、SUV人気に押されて期待したほど売れていない。


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