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2015/07/31

<オピニオン>韓国経済講座 第176回                                                        アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

  • アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

    かさい・のぶゆき 1948年、神奈川県生まれ。国際開発センター研究員、ソウル大学経済研究所客員教授、秀明大学大学院教授を経てアジア経済文化研究所理事・首席研究員。

  • 韓国経済講座 第176回

◆日韓貿易サイクル◆

 6回目のサイクルの終わりが近づいている。この50年間に日韓貿易は飛躍的な増加を示した。1995年の日韓貿易総額は2億2100万㌦であったものが、14年には859億5200万㌦、389倍になった。しかし、その過程は一貫した韓国の対日赤字が続いており、65年に1億3000万㌦であったものが10年には361億2000万㌦の最高値となり、14年現在でも215億8400万㌦、166倍の水準にある。

 対日赤字の継続的増加は、単なる貿易収支上の問題にとどまらず、韓国の産業発展と緊密に結びついているところにその根の深さがある。この点に関しては日韓で様々な議論がなされてきたが、大別すると、その一つは赤字性善説とも呼べるもので、対日輸入によって赤字を出しても輸入財より高い付加価値を付けて輸出利益を取り総合収支で黒字となれば是とし、その過程で産業発展を促進すると論ずるもので、「対日赤字は発展装置」と考える議論である。これに対峙する議論は赤字性悪説で、産業発展のアキレス腱である製品組み立て領域である川下産業の発展に比べて、原材料・素材領域である川上産業、部品・半製品領域の川中産業の相対的立ち遅れという不均衡産業構造を是正することを主張する。つまり、この議論はバランスのとれた生産工程の自立達成を目的とするがために個別収支を問題視する議論である。

 ところで、この50年間の日韓貿易関係には一定の法則が観察される。すなわち、日韓貿易サイクルで、そのメカニズムは次のような枠組みで構成される。①期(依存期)=新産業開発→対日赤字増大→設備投資増大→資本形成拡充→対日輸出競争力低下。②期(自立期)=産業成熟・自立→対日赤字停滞・減少→国内投資低迷・減少→資本形成低迷→対日輸出競争力向上→産業の成長限界・転換→新産業開発→より高度な産業段階と新たな日韓貿易サイクルへ。

 現在日韓貿易サイクルは6回目に入っており、以下にその期別区分と産業転換をまとめておく。なお紙幅の都合上、統計分析は省略する。

 ①軽工業・労働集約財サイクル(1964年~73年)=前期(依存期)64~69年、後期(自立期)69年~73年。私債凍結(72年8・3措置)と多くの借款企業の倒産や企業負債膨張。

 ②重化学工業サイクル(74年~82年)=前期(依存期)74~78年、後期(自立期)78年~82年。重化学工業化の下での過剰投資による企業倒産と農業不作が重なった80年不況。

 ③資本集約財サイクル(83~89年)=前期(依存期)83~86年、後期(自立期)86年~89年。84年の産業合理化措置以降の大規模企業の連鎖倒産。

 ④技術集約財サイクル(90年~98年)=前期(依存期)90~96年、後期(自立期)96年~98年。企業負債膨張と海外負債増大、大統領選挙と財閥倒産、アジア通貨危機とIMF緊急融資要請。

 ⑤IT産業サイクル(99年~06年)=前期(依存期)99~04年、後期(自立期)04年~06年。IMF管理体制下における金融、企業、公共、労働部門の四大改革。


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