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2015/10/02

<オピニオン>韓国経済講座 第178回                                                        アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

  • アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

    かさい・のぶゆき 1948年、神奈川県生まれ。国際開発センター研究員、ソウル大学経済研究所客員教授、秀明大学大学院教授を経てアジア経済文化研究所理事・首席研究員。

  • 韓国経済講座 第178回

◆便りがないのは元気な証拠?㊤◆

 最近、韓国経済の動向を知らせるニュースが少ない。巷では「便りがないのは元気な証拠」というが、もともと「無沙汰は無事の便り」といい、何の便りもないことは、無事である証拠なので心配はないということ。また、便りや連絡が無いということは、何も変わったことが無い、無事な証拠だということを意味していることは広く知られている。では韓国の経済も無事ということなのか。少ない中での報道をいろいろ集めると、どうも諺通りというわけではないようだ。中央日報(7月27日付)によれば、米国の世論調査機関であるピュー研究所による世界40カ国の体感景気アンケートの調査結果(7月7日)において、韓国人回答者の83%が「経済状況は悪い」とし、経済状況が良いと回答した人は16%に過ぎなかった、と報道している。国民の大半が、景気が悪いと感じているが、これは不況感の強い日本でも悲観論(60%)が楽観論(37%)よりも上回っている。つまり日本人が感じている不況感を、韓国人はさらに多くの人々が感じているようだ。

 現代経済研究院のアンケート調査は、さらに深刻で、全国の成人男女810人を対象に実施した結果、回答者の94・1%が「景気回復を体感できずにいる」と答えたと報じている。理由としては雇用不安(42・2%)が最も多く、家計負債の増加(29・2%)、所得減少(22・5%)が後に続いたとしている。

 では実際の経済統計で最近の状況を見てみよう。2015年9月2日号として韓国銀行経済統計局国民計定課が『2015年第2四半期国民所得(速報)』を報道資料として公表しており、そこから国民所得の支出項目の増減率を表に掲げた。最近2年半を四半期ごとに見ているが、国内総生産は対前期比で0%台成長が続いている。この間10四半期のうち対前期比GDP成長率が1%に達したのはわずか2四半期(13年第2四半期、14年第1四半期)のみで、ここ5四半期は連続で0%台成長が続いている。実際0%台では前期からの変化は感じられず、しかも国民総生産の平均値であることで、産業分野別ではマイナス分野もあり、総じて成長感は感じられないだろう。

 その要因となる企業の投資活動を見ると、雇用効果の高い建設投資はかなり増減があり、4~5%の投資成長があると同じ程度の減少を繰り返しており、民間住宅、企業の機械などを除く民間非住宅建設投資などの建設に波があり、そのことが雇用不安定につながっていたことを窺わせる。企業の機械などの投資を示す設備投資は対前期比でマイナスになった時期は14年第1四半期だけであるが、建設投資と同様対前期比での変動がみられる。すなわち生産設備の新設、生産能力の増強、陳腐化した設備の更新・補強、合理化、省エネ・省力化、情報化などの更新速度が緩慢であったことを表している。企業の投資がこのように安定的でないことは、雇用、景気に影響を及ぼす大きな原因となってきた。


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