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2016/01/15

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第36回 アジア・パラドックスと韓日経済の役割③                                                    多摩大学経営情報学部 金 美徳 学科長

  • 多摩大学経営情報学部 金 美徳 学科長

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部事業構想学科長および同大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

◆連携が新アイデアや新戦略の源に◆

 国際関係の緊張と経済関係の拡大という大きな政経矛盾である「アジア・パラドックス」の解消という視点から「韓日経済の役割」を改めて考え直してみる。密接な韓日経済について前号に引き続き実態を分析する。

 韓日企業連携の連携目的は、技術協力、販売拡大、共同価格交渉、共同海外進出、買収防衛など多様化している。例えば新日鉄住金とポスコは、2000年に戦略的提携関係(18年8月1日まで)を結んで以来15年間、研究開発・技術交流・原料調達・共同事業など多くの分野で提携の成果を挙げている。

 ブラジル鉄鋼大手ヴァーレに対する鉄鉱石の共同価格交渉、ポスコのベトナム冷延工場に新日鉄住金が出資(第2株主)、モザンビークのレブボー炭鉱の共同開発、製造過程の副産物をリサイクルする韓国での合弁事業などのほか、アルセロール・ミタルからの買収を共同で防衛しようともしている。

 また、両社が開催した技術交流会は500回(延べ参加者7000人)に上り、環境・原料など幅広い研究テーマで共同研究を推進して20件を超える特許も共同出願した。さらに、文化交流も行われており、毎年両国でオーケストラや伝統音楽などの演奏会を催している。

 一方、両社は、12年以降、技術流出訴訟問題を抱えており、新日鉄住金が高機能鋼板「方向性電磁鋼板」の製造技術の不正取得・不正使用などを理由に損害賠償や製造・販売差し止めなどを求めてポスコを東京地裁に提訴した。

 ただ15年9月にポスコが新日鉄住金に対して和解金300億円を支払う一方、新日鉄住金も3件の訴訟を取り下げ、和解している。最早、新日鉄住金とポスコの韓日企業連携は、人と人との交流による信頼関係のみならず、大きな困難も乗り越えて絆さえも築き始めている。

 また、韓日企業連携の大型事例も増えている。例えば①東京ガスが、韓国ガス公社と液化天然ガス(LNG)の調達で提携。

 ②シャープとサムスン電子が資本提携。サムスン電子がシャープに100億円(株式3%、株主5位・上位4位までは保険会社と銀行)を出資。シャープは、超大型テレビの生産に必要な次世代規格(第10世代)の液晶パネルを供給し、工場の稼働率を高める。

 ③トヨタとサムスン電子が車内でスマートフォンを安全・快適に利用できるシステムを開発する。車内でスマホに触れることなく音楽の再生や音声通話、電子メールの送信などが可能になる。

 ④三菱商事と韓国ガス公社がインドネシアの天然ガス開発からLNG製造・販売まで一貫してプロジェクトを共同運営する。同鉱区から生産される天然ガスはインドネシアに供給されるほか、日本や韓国へ輸出される。

 ⑤三井物産と大宇建設が、アフリカ・モロッコ石炭火力発電所建設で提携。受注金額(1000億円)と発電能力(出力合計700メガ㍗)ともに北アフリカ最大規模のプロジェクトとなる。

 さらに、韓日金融連携の事例も出ている。①三井住友銀行が、積極的な海外投資を進める韓国企業の旺盛な資金需要を取り込むためソウル支店に「グローバルコリア営業部」を設置。ロンドン、ニューヨーク、シンガポールにも専属の営業職員を派遣し、地域横断的に融資案件の獲得を図っている。三井住友銀行は07年に韓国最大手の国民銀行と業務提携している。


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