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2016/05/13

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第40回 アジア・グローバル人材と北朝鮮に関する教養教育③                                                    多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

  • 多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部および同大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

◆実体験駆使した冷静な客観視を◆

 アジア・グローバル人材に必要な素養は、「歴史観+世界観=時代認識」と「課題の発見力と解決力」であると考えている。具体的には、①歴史の鏡を磨いて人間を洞察し、未来を予測する。②国際情勢分析を通じて世界潮流や経済環境を見極める。③世界の民族・宗教・文化に対する理解を通じて論理力を磨く。④不条理な問題・課題を解決し、歴史の進歩に貢献する。そしてこの歴史・人間に対する深い洞察、世界認識、普遍的な論理的思考、課題発見・解決力を持って新時代を創造する志と使命感である。これは、アジア・リベラルアーツ(アジアに関する教養)とも言える。

 この時代認識やリベラルアーツにとって大事なことは、人文科学・自然科学・社会科学などあらゆる分野の知識・情報・知恵・論理を「繋げる」ことであり、その「繋がり」を紐解くことである。

 また、「繋げる」や「繋がり」によって問題・課題を解決することである。逆に言えばいくら立派な蛸壺的知識を持っていても問題・課題解決できなければ単なる宝の持ち腐れに過ぎない。

 北朝鮮情報は、ただ「とんでもない国」だといって怒りに任せて情報に触れたり、北朝鮮専門家が需要に迎合してビジネスライク的に、マスメディアが権力や視聴率を意識して情報発信したとすればその本質を見誤る恐れがある。これでは、北朝鮮の外交戦略やマスメディア戦略の思うままであり、日本の国益にも大きな損失となる。

 今号も引き続き「北朝鮮が分かれば、世界の本音が分かる」という視点から、北朝鮮を通じて韓国・日本・米国・中国・ロシアなどの論理や本音を探る。また、同時に北朝鮮教養教育論を展開する。

 北朝鮮情報は、過去には大変少なく、希少価値があったため、その情報の正確性や分析の客観性が少々乏しくても、それなりに受け入れられる傾向があった。しかし現在では、大量の北朝鮮情報が、毎日のようにテレビ・新聞・ネットで垂れ流れており、氾濫している。そのため北朝鮮を巡る国際情勢、体制・政権の本質、独特な論理・メッセージを見極めるには、大量の情報の中から取捨選択する洞察力や北朝鮮と世界各国との国際関係から紐解く高度な専門性などが求められる。特に国際的な経済関係、ビジネス、お金という切り口から鋭くえぐりだすべきである。すなわち国際政治学や国際関係論だけでなく、国際経済学、国際経営学、ビジネスなど多角的かつ総合的な方法論・見識・経験知が必要である。もはや、北朝鮮専門家は、北朝鮮専門家になれないことを意味する。すなわち北朝鮮だけを専門にする専門家・研究者では、その客観性や説得力に限界があると言わざるを得ない。

 日本は、拉致・核・ミサイル問題など北朝鮮問題の影響を大きく受けていることから北朝鮮情報が世界的に見ても非常に多く発信・配信されており、国民も否応なくテレビ・新聞・ネットで多くの情報に触れている。寝ても覚めても北朝鮮情報である。日本人にとって北朝鮮は、もはや、生理的に合わず、感情的な存在でしかない。日本人がこれほどまでに嫌で仕方なく、うんざりしており、関心のない北朝鮮情報(拉致問題以外)は、情報発信や出版を自粛してほしいくらいである。日本国民は、このような特殊なメディア環境により良くも悪くも多くの方が、「相当な北朝鮮通」となっている。

つづきは本紙へ


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