◆世界経済に影響及ぼす北核問題◆
北朝鮮問題とは、「核・ミサイル・拉致問題」である。しかし日本では、少しニュアンスが違っており、「拉致・核・ミサイル問題」となる。それぞれの北朝鮮問題を詳しく解説する。核問題は、核実験を4回実施(2006年、09年、13年、16年)したことが問題となっている。特に16年の水爆と称される核実験は、広島原爆の半分の規模に相当すると推察されており、もし実験に成功した場合は広島原爆の1000倍に達するとの意見もある。水素爆弾の実験を行った国は、米国、ロシア(旧ソ連)、英国、フランス、中国、インドに次ぐ7カ国目となる。北朝鮮は、事実上の核保有国であるインド、パキスタン、イスラエルと同規模の核戦力を目標にしている。また、現在、核兵器10個を作ることができる兵器級プルトニウムを保有している。さらに、核兵器を毎年1~2個ずつ作り100発以上の保有を目指して開発を続ける可能性がある。
北朝鮮核問題は、単なる世界の安全保障問題だけではなく、世界経済にも大きな影響を及ぼしている。16年1月6日12時30分に行われた北朝鮮の「水爆実験」は、その実施が報道されるや否や、東アジアの緊張が高まったと判断され、売り注文が広がり、日経平均株価が6日以降大幅安となった。日経平均株価が3日連続で下落したのは1995年以来21年ぶりのことである。また、ニューヨーク株式市場でも東京と同様に売りが膨らみ、ダウ平均株価が250㌦以上の値下がりを見せた。
ミサイル問題は、長距離ミサイル発射を7回実施(93年、98年、06年、09年、12年4月、12年12月、16年)したこと。また、米国まで到達する核弾頭ミサイルを8発保有していることが問題となっている。
拉致問題は、日本人拉致被害者(17人)、日本人特定失踪者(0~470人)、日本人遺骨(北朝鮮2万柱以上)、日本人配偶者問題(北朝鮮在住者数1831人)の4つの問題を同時に解決しようとする問題である。至極当然であるが、日本人拉致被害者と日本人特定失踪者は北朝鮮に非がある問題であるが、日本人遺骨と日本人配偶者問題は北朝鮮に非がない問題である。拉致被害者問題は、北朝鮮が02年と04年の2回の調査を通じて、拉致被害者17人のうち5人を日本に帰国させた。残りの12人については、北朝鮮政府が「8人死亡、4人未入国」と説明してきたが、調査の信憑性が疑問視されている。それでは拉致問題の解決はどのように考えればよいのか、または解決をどのように解釈すればよいのだろうか。原則は、当然の如く「拉致被害者17人、すなわち残りの12人の生還」をもって解決とすべきである。ただ他の意見として「拉致被害者17人に特定失踪者(0~470人)を加えた約500名の生還」、「死亡したとされる8人のみの拉致被害者の生還」、「死亡の経緯など真相の究明」をもって解決とすべきという意見もある。日本人遺骨問題は、北朝鮮が日本人の遺骨8000柱を返還するために1柱120万円、計100億円の経費を要求している。
次に北朝鮮の経済現状を見てみる。経済規模は、15年GNI(国民総所得)が3兆1740億円であり、秋田県、山梨県、関西電力、損保ジャパン、みずほグループの売上高と同規模である。したがって世界は、秋田県経済と同規模の小さな国に振り回されていることになる。1人当たりGNIは、12万8000円でカンボジアやジンバブエと同水準である。経済成長率は、韓国銀行の推計値によると11年以降4年連続でプラス成長(11年0・8%、12年1・3%、13年1・1%、14年1%)であったが、15年は1・1%減となり、5年ぶりのマイナス成長に転じた。マイナス成長は、金正恩体制になってからは初めてである。原因は、建設業は好調であったが、鉱工業や電気・ガス・水道業が不振であったためと分析されている。15年貿易額(南北交易除く)は、前年比17・9%減の62億5000万㌦。内訳は、輸出が前年比14・8%減の27億㌦、輸入が20%減の35億6000万㌦。主要輸出品は無煙炭と鉄鉱石、主な貿易相手国は中国、韓国、ロシアである。15年南北交易は、前年比15・7%増の27億1130万㌦。北朝鮮の輸入が前年比10・8%増の12億5900万㌦、北朝鮮の輸出が前年比20・4%増の14億5230万㌦である。
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