◆注目されるメキシコ◆
前回まで、チャイナショックについて触れながら、サムスン電子による携帯電話のベトナムへの生産シフトとその影響をみてきた。
チャイナショックを受けているのは自動車業界でも同じである。中国では14年に入り自動車販売が鈍化し、15年4月から8月まで前年割れが続いたこともあり、15年の現代自動車の中国における販売台数(韓国からの輸出を含む)は前年比7・0%減となった。
では自動車業界において、現在注目される動きがみられる国はどこであろうか。その一つは間違いなくメキシコであろう。
メキシコ政府が北米自由貿易協定(NAFTA)を含め、FTAを積極的に締結してきたため、生産コストの低い同国が輸出生産拠点として機能し出した。世界の主要完成車メーカーが組立工場を設立した結果、自動車生産台数でメキシコは2009年の10位から14年に7位へ上昇した。15年の生産台数は350万台強(世界7位、輸出は世界4位)である。ちなみに6位までの順は、中国、米国、日本、ドイツ、韓国、インドである。
現代自動車グループでは、起亜自動車が14年にメキシコのヌエボレオン州で工場建設に着工し、今年5月頃に稼働予定である。
これまでの現代自動車グループの北米での生産体制をみると、現代自動車が米国アラバマ州での生産を05年に開始し、現在ソナタ(中型セダン)とエラントラ(コンパクトカー)を生産している。起亜自動車はジョージア州で09年より生産を開始し、オプティマ(中型セダン、韓国名K5)とソレント(SUV)を生産している。また、現代自動車は起亜自動車のジョージア工場にサンタフェ(SUV)の生産を委託している。
上記以外の車種は韓国から輸出されるため、米国で販売される自動車の韓国国内での生産比率は高い。この背景には、①安定したサプライチェーンの存在、②集中生産によるコストダウン、③FTAの活用、④ウォン安による輸出競争力強化などのメリットが存在していた。また、現代自動車の場合には労働組合との間で、国内で最低生産台数を維持する合意をしていることも影響している。
起亜自動車がメキシコでの現地生産を開始するのは、米国ジョージア工場での生産能力が限界に達したこと、メキシコが北米と南米市場向け輸出生産拠点として活用できることなどが指摘できる。
起亜自動車の進出に伴い、現代モービスと現代ウィアもメキシコに進出している。今後起亜自動車の生産が本格化すれば、韓国からの部品輸出および系列部品メーカーの進出が増えることが予想される。さらに現地で生産する完成車メーカー向けに部品を供給する機会も増加することが期待される。
メキシコは韓国にとって10番目の輸出先である(15年)。メキシコ向け輸出全体に占める自動車部品の割合は上昇傾向にあり、06年(1~2月)は10・6%へ上昇し、メキシコが米国、中国、チェコに続く輸出先になっているのが注目される(下図)。
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