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2016/05/20

<オピニオン>転換期の韓国経済 第75回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 転換期の韓国経済 第75回

◆チャイナショック◆

 サムスングループと現代自動車グループは韓国を代表する大企業集団である。韓国公正取引委員会が今年4月に発表した資料によれば、総資産額基準でそれぞれ1位、2位となっており、この二グループだけで上位20グループの資産総額の約3割を占める。

 その意味で、サムスングループと現代自動車グループの動向が韓国経済全体に大きな影響を及ぼすことは想像に難くない。

 今年2月にKIET(産業研究院)を訪問した際に感じたのは、中国企業の台頭(韓国と中国との技術力縮小)に強い警戒感を抱いていることであった。また、中国企業による人材の引き抜きが激しくなっており、最近では液晶パネル産業がそうであるとの指摘であった。かつて日韓の間でみられたことが、近年は韓中の間で生じているのである。

 チャイナショック(中国の成長減速、過剰生産、中国企業の台頭など)にどう対応するのか。これは韓国経済ならびに韓国企業にとって現在最大の課題となっている。

 サムスングループをみると、韓国国内ではバイオ産業や次世代自動車関連産業などの新事業に力を入れながら、中国企業の台頭を受けて事業の高度化を進めている。パネルでは有機ELパネル、半導体では最先端メモリーやプロセッサーへのシフトである。

 中国事業はNAND型フラッシュメモリーの生産に示されるようなBtoB事業を中心にして、スマートフォンや家電製品の量産はベトナムで行う方針を数年前に打ち出した。KIETの話しでは、中国工場を一部閉鎖してベトナムへ生産シフトするサムスンの計画に難色を示した中国側に対して、サムスンは最新技術を用いたNAND型フラッシュメモリー工場を代わりに建設したのである。

 先日そのベトナムを訪れた。ハノイからハイフォンへ向かう国道18号沿いに、サムスン電子第一工場とサムスンSDI(バッテリー生産)の工場が並んでいて圧巻である。

 系列企業と協力企業も数多く進出して、部品産業の集積が進み出した。従来の中国を最終組立拠点とするサプライチェーンではなく、ベトナムを最終組立拠点とするサプライチェーンが形成され始めており、アジアの新しい動きとして注目される。

 他方、現代自動車グループはどうであろうか。15年の販売台数をみると、現代自動車の場合には米国が前年比(以下同じ)5・0%増、EUが9・8%増となったのに対し、新興国市場ではインドでこそ13・1%増となったものの、中国が7・0%減、その他が4・9%減となった(上図)。起亜自動車も米国が7・9%増、欧州(EU+EFTA)が8・8%増となった一方、中国が4・6%減、その他が11・7%減となった(起亜自動車はインドでの販売はない)。


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