ここから本文です

2016/01/08

<オピニオン>曲がり角の韓国経済 第3回 経済成長のためにはまず規制緩和                                                    ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

  • ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

    キム・ミョンジュン 1970年仁川生まれ。韓神大学校日本学科卒。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て現在、ニッセイ基礎研究所准主任研究員。

◆競争力高めグローバル市場で生き残りを◆

 新しい年2016年がスタートした。16年の干支は「丙申」で、丙には「赤い」、「明るい」という意味が含まれており、申には「猿」を当てはめている。つまり、丙申年は「赤い猿の年」だと言えるだろう。陰陽五行説において赤色は大きな成功や生命力が盛んでいることを意味し、猿は賢く才能豊かな動物であるので、丙申年は、才能ある者が大きく成功する年だと言える。では、16年は韓国経済が大きく成功(成長)する年になるだろうか。韓国銀行や韓国開発研究院(KDI)などの国策機関は今年の韓国の経済成長率が3%をやや上回ると見通している。しかしながら、LG経済研究院など民間の研究機関は、今年の経済成長率を2%台半ばから後半と予測している。世界経済の低成長が定着している中で、2~3%の経済成長率は決して低い水準ではないが、予測不可能な国内外の多様なリスクにより、この予想値すら達成できなかった場合、韓国経済は大きなダメージを受け、更なる危機に直面する恐れが高い。特に、米国の金利引き上げや中国経済の成長鈍化は韓国経済のプラス成長を妨げる要因になるだろう。

 韓国経済の復活のために様々な提案が出されているものの、その中で筆者が特に注目したいのは「規制緩和」である。15年11月にソウルでは、免税店特許選定の結果発表があり、長い間ソウル市内の免税店を運営してきたロッテワールドタワー店やウォーカーヒル店が特許権を延長することができなくなり、両店は閉店することになった。「5年周期特許再承認制度」と言われる免税店に対する5年間の特許許可制は、大企業の寡占を反対する気運などの影響で、関税法を改正し、13年から施行された。その結果、免税の特許期間は従来の10年から5年に縮小され、事業の更新方法も自動更新から競争入札に変更された。

 「5年周期特許再承認」制度の趣旨は、財閥に長期間にわたる独占的地位や特典を与えることを防ぐことである。その趣旨が理解できないわけではないが、莫大な投資費がかかる免税店事業が5年しか保障されない場合に、免税店に中長期的な投資をする企業は少なく、免税店の国際競争力も弱くなる恐れがある。また、今回の措置により多数の人々が職を失うことになった。今後もこの制度が続く限り、雇用の不安定は拡大され、朴槿惠政権が力を入れて推進している雇用創出政策の趣旨が薄くなるリスクがある。さらに、外国人投資家が不確実性の高まった免税店関連企業の株式を手放すことにより、関連企業の株価は下落し、韓国経済全体にマイナスの影響を与えるだろう。

 韓国政府が免税店事業に対する規制を強化していることとは対照的に、日本政府は早いスピードで規制を緩和するなど免税店事業を全面的に支援する政策を実施している。20年までに訪日外国人旅行者2000万人を目指している日本政府は、中国などからの観光客を誘致するために外国人旅行者の買い物において、「全品目」が消費税免税となるように税制を改正するとともに、免税手続を簡素化した。その結果、消費税を免税する百貨店や家電量販店などの「タックスフリーショップ」は14年の約5000カ所から15年には約1万9000カ所に大幅に増加した。


つづきは本紙へ


バックナンバー

<オピニオン>