◆「対立や闘争」より「対話や協調」で対応を◆
1月20日から23日にかけてスイスのダボスで開催された第46回世界経済フォーラム年次総会、いわゆるダボス会議では、「第4次産業革命の理解」をテーマに未来の仕事に対する議論が活発に行われた。第1次産業革命は18~19世紀にイギリスではじまった石炭による蒸気や水力機関等を使った機械による大量生産のことであり、第2次産業革命は20世紀初頭に米国やドイツで始まった石油や電気の活用と組み立てによる大量生産のことである。そして、第3次産業革命は1970年代に始まったコンピューターやインターネット等のIT技術を利用した大量生産のことを意味する。では、第4次産業革命は一体どのようなものだろうか。
第4次産業革命は、ロボット、ドローン、IoT(モノのインターネット)、人工知能等人類が今まで構築してきた最先端の技術を使って物を自動的に大量生産する仕組みであり、「インダストリー4・0」とも呼ばれている。第4次産業革命は、今までの産業革命が一つあるいは二つ程度の資源の利用や新しい革新的な技術に頼っていたこととは異なり、多様な分野の多数の革新的な技術を融合させたより包括的な産業革命であると言える。
第4次産業革命の代表的な例としては「スマート工場」が挙げられる。「スマート工場」とは、製品の企画、生産、流通、販売等のすべての過程をICT(情報通信技術)で統合し、最小費用と時間でモノを生産する仕組みである。つまり、第4次産業革命が進むと、企業はより安い費用で効率よく、モノを生産することが可能になり、企業の競争力を高めることができる。そこで、世界のグローバル企業は第4次産業革命の波に乗り遅れると競争力を失うと判断し、「スマート工場」の実現など第4次産業革命に向けた取り組みを本格化している。シーメンスやテスラが生産部門に、トヨタ自動車が流通・販売部門にスマート工場の仕組みを適用していることがそのいい例であり、今後もこのような動きはグローバル企業を中心として加速化することが予想される。
しかしながら、第4次産業革命には正の側面だけあるわけではない。ダボス会議で発表された「未来雇用報告書」では第4次産業革命による新しい技術の台頭に伴い、今後5年間で日本など15カ国で雇用が500万件消えるだろうと見通した。特に最も大きな打撃を受ける職種としては女性の進出の多い事務職などいわゆる「ミドルクラスの熟練職」が挙げられた。皮肉にも人間の技術力の向上が人間を労働市場から追い出すスピードを速めている。また、先進国と発展途上国の間の格差がさらに広がると予想している。格差は国家間だけではなく、個人の間でも広がる恐れが高く、各国は第4次産業革命の推進に伴い、格差拡大に対する対策も同時に実施する必要があると考えられる。
では、韓国は「第4次産業革命」にどのように対応しているだろうか。スイス最大の金融会社UBSが発表した白書では、「第4次産業革命に対する適応能力」の国別ランキングを発表しており、韓国のランキングは139カ国中25位であったものの、同じアジアのシンガポール(2位)、日本(12位)、台湾(16位)に後れを取っている。国別ランキングは、労働市場の柔軟性、技術水準、教育システム、社会インフラ、法的安定性という5つの項目を評価し、点数化したもの。韓国は、教育システムが19位、社会インフラが20位で上位圏を維持したものの、労働市場の柔軟性が83位になったことが全体の足を引っ張る要因となった。また、1月19日にブルームバーグ通信が発表した「2016年ブルームバーグ革新指数」でも、韓国は3年連続で世界で最も革新的な国に選ばれた。しかしながら、その詳細を見ると、「製造業の付加価値」、「高等教育の効率」の両項目が1位、「研究開発と先端技術の集中度」、「特許登録活動」がそれぞれ2位であることに比べて、「労働生産性」だけは39位で相対的に低くランクされていた。同通信は号俸制を中心とした賃金構造が企業と産業間の労働力移動を防いでおり、労働市場の硬直性が韓国経済の成長にマイナス要因になっていることを指摘した。
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