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2017/06/09

<オピニオン>曲がり角の韓国経済 第20回 クラウドワーカー急増、現状の把握を!                                                      ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

  • ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

    キム・ミョンジュン 1970年仁川生まれ。韓神大学校日本学科卒。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て現在、ニッセイ基礎研究所准主任研究員。

◆格差が広がらぬよう迅速な対策を◆

 最近、スマートフォンやタブレットPCの普及により、インターネットのプラットフォームを通じて単発の仕事を依頼したり請け負ったりする働き方を選択するクラウドワーカーが急増している。ここでいうプラットフォームとは、ネット上のアプリケーションを作動させるのに必要な基盤となる装置やソフトウエア、サービス、あるいはそれらの組み合わせ(動作環境)のことであり、既存の職業紹介所のように市場の需要と供給をつなげる役割をしている。しかしながらプラットフォームを利用した働き方に関する用語は統一されておらず、ここでは用語の違いによる混沌を避けるために、インターネットのプラットフォームを通じて単発の仕事を依頼したり請け負ったりする働き方をクラウドワーク、そして、そのような働き方をする人をクラウドワーカーと統一して説明したい。

 クラウドワーカーの中でも昔からよく使われており、最もなじみのある言葉はフリーランスであるだろう。米非営利組織のフリーランサーズユニオンとクラウドソーシングサービスを運営しているUpワークによる調査「フリーランシング・イン・アメリカ2016」によると、16年時点の米国のフリーランスは5500万人に上り、働く人の35%がフリーランスという働き方で労働市場に参加しているという結果が出た。これは14年の調査と比べて200万人も増加した結果であり、20年には働く人の約50%がフリーランスになると予想されている。一方、日本におけるフリーランスの数は17年現在1122万人で、これは労働力人口の17%を占める水準である。欧州では、16年に大学等を中心にクラウドワーカーの実態を把握するためのアンケート調査が行われ、その結果、英国の11%(16歳~75歳)、スウェーデンの12%(16歳~65歳)、ドイツの14%(16歳~70歳)がクラウドワーカーとして働いていることが明らかになった。

 韓国でもフリーランサーやクラウドワーカーという言葉が使われているものの、まだその実態が把握できるデータは存在していない。現在、韓国で関連データとして利用できるのは「特殊形態勤労従事者」の実態を把握するための調査程度ではないかと思う。特殊形態勤労従事者とは、労働の提供方法や労働時間等は独自で決定している点からは個人事業主であるが、仕事の発注者から業務の指示・命令を受けている点からは労働者としての性格を持っている就業者であり、その典型的な例としては、保険外交員、ゴルフ場のキャディー、生コン車両運転手、家庭教師等が挙げられる。韓国統計庁の「経済活動人口調査(勤労形態別付加調査)」によると、16年8月時点の特殊形態勤労従事者は49・4万人であると把握された。これは全労働者(1962・7万人)の2・5%に過ぎない数値で、上記諸外国の結果と比べてもその規模がかなり小さいことが分かる。このように特殊形態勤労従事者の規模が小さく推計された理由は、「本人は特殊形態勤労従事者であるか?」という質問項目の対象者が労働者に限定されていたからである。そこで、国家人権委員会は15年に特殊形態勤労従事者の現状をより正確に把握するための委託調査を行い、その調査の結果、14年時点の韓国における特殊形態勤労従事者は約230万人であると推計された。これは全就業者の約8・9%に当たる数値であり、統計庁の結果とは大きな差を見せている。しかしながら、この調査でも韓国におけるクラウドワーカーがすべて把握されたわけではなく、米国や日本のようにより幅広い基準を適用した場合、韓国におけるクラウドワーカーの規模は上記の二つの調査を大きく上回ると考えられる。

 クラウドワーカーが増加しているにも関わらず、彼らに対する法的措置はまだ十分に整備されておらず、多くのクラウドワーカーが多様なリスクに直面している。使用者は、今までの伝統的な雇用をクラウドワーカーに代替することにより、生産、雇用、賃金を需要の変化に合わせて調整し、安価に効率良く仕事を依頼することができるようになった。一方、


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