◆生産性向上、雇用創出、生活の質改善へ◆
日本では現在、政府と企業が「労働時間の削減」に本腰を入れている。経団連と連合は今年3月13日、働き方改革の一環として残業時間の上限を最大で月60時間(年720時間)までに制限するという、残業時間の上限規制について労使で合意し、安倍首相に合意文書を手渡した。これが実行されると、事実上無制限に残業時間を増やすことができる「36協定」が制限されることになる。
企業の対応も積極的である。日本生命が9月末に発表した「ニッセイ景況アンケート調査結果―2017年度調査」で、労働時間短縮に向けた企業の取り組み状況を聞いたところ、「取り組んでいる」と回答した企業が63・8%で、「取り組んでおらず、今後も取り組む予定はない」企業の割合10・5%を大きく上回った。また、現在は「取り組んでいないが、今後取り組む予定である」と回答した企業も18・2%に達しており、すでに「取り組んでいる」企業と合わせて8割強の企業が労働時間短縮を当面の課題として認識していることがうかがえる。
労働時間短縮に取り組んでいる企業に、理由を尋ねたところ、「生産性の向上」や「従業員満足度の向上及び働く意欲の引き上げ」が6割弱で最も大きな理由として挙げられた。労働時間短縮を含む働き方改革をする上での課題として、「人件費の負担増加」を挙げた企業が最も多く、次は、「人事及び評価システムの見直し」、「IT環境の改善や設備の整備」、「収益性の低下」の順であった。
では、韓国はどうだろうか。OECDの最新の調査結果によると、韓国の一人当たり平均年間総実労働時間は16年現在2069時間で、メキシコの2255時間に続いて2番目に長く、日本の1713時間とOECD平均の1763時間より、それぞれ356時間と306時間も長い。1日8時間の労働時間を基準にすると、日本より約44・5日、OECD加盟34カ国より約38・3日長く働いていると言える。韓国における労働時間短縮の問題は10年に勤労基準法(日本の労働基準法に当たる)に違反して長時間労働をした会社に対して労働監督をしたことを背景に提起された。その後、14年3月に開かれた国会の環境労働委員会雇用労働小委員会では休日労働を時間外労働から除外した政府の行政解析の問題点を指摘し、1週間の労働時間の上限を52時間にすることが提案されたものの、経済界の反対で実施までに至らなかった。また、15年には労働契約の解除手続きの明確化、非正規労働者の雇用安定、青年層の雇用拡大のための努力、労働時間の短縮等を含めた労使政の大妥協案が可決されたものの、労働改革二大指針(一般解雇、就業規則変更要件緩和)を巡る意見の違いなどが原因で、16年1月に韓国労総が9・15労使政大妥協破棄を宣言することにより、労働時間短縮はまたしても中断されてしまった。
その後、文在寅大統領が選挙公約の一つとして労働時間短縮を挙げており、現在、韓国の国会では、勤労基準法の改正による労働時間短縮に対する議論が白熱している。現行の勤労基準法では、「1 週間の労働時間は、休憩時間を除いて、40 時間を超過できない。但し、当事者間で合意したときは、1 週間に 12 時間を限度として、週40時間の労働時間を延長することができる」と週40時間の労働時間と時間外労働12時間を認めて、最長で週52時間を越えないように規定している。しかしながら、雇用労働部は行政解釈により、休日勤務を時間外労働勤務として認めず、休日勤務16時間を含めて最大週68時間までの長時間労働の慣行が続いてきた。
国会の環境労働委員会は8月28日に雇用労働小委員会を開いて、1週間の最大労働時間を現在の68時間から52時間に短縮することを中心に議論を行い、企業を三つのグループ(従業員数5~59名、50~299名、300人以上)に分けて段階的に実施することを暫定的に合意した。しかしながら具体的な実施時期に対しては与野党の意見が分かれており、
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