◆人材流出防止対策の早期実施を◆
11月26日にスイスの国際経営開発研究院(IMD)が発表した「2017世界人材報告書」によると、韓国の人材競争力指数は100点満点の55・82点で調査対象63カ国中39位にとどまった。昨年よりも1段階、15年よりも7段階も下落した結果である。
1989年に最初の調査を実施してから今年で29回目を迎える同調査は、毎年競争力関連統計と企業の最高経営者などに対するアンケート調査結果などを分析して各国が人材を育成・維持・誘致し、企業需要を充足する能力を評価して順位をつけている。調査は3分野(人的資本に対する投資、海外人材を誘致する魅力度、人材活用の容易性)の30項目に対して行われる。
韓国の順位が下落したのは自国の人材を維持し、海外の人材を誘引する能力と関連した項目で低い点数を受けたからである。韓国は調査項目のうち人材維持・誘致と関連する「労働者の動機付与」で、10点満点中4・12点を取り、全対象国のうち5番目に低い59位になった。また、人材維持関連の「頭脳流出」も3・57点で54位にとどまった。これは中国の4・20点(41位)よりも低い数値である。この指数は0に近いほど自国を離れて海外で働く人材が多いことを意味する。頭脳流出が少ないノルウェー (8・36点、1位)スイス(7・61点、2位)、オランダ(7・46点、3位)と大きな差を見せている。
実際に、韓国における07年から16年の10年間の国籍放棄者(国籍喪失・離脱者)は22万3611人で、同期間の国籍取得者15万3257人を大きく上回っている。16年だけで3万6404人が大韓民国の国籍を放棄している。国籍放棄者が取得した国籍を国別に見ると、米国が9万4908人で最も多く、次いで日本(5万8870人)、カナダ(3万2732人)の順であった。
では、韓国国籍を捨てる人はなぜ増えているのだろうか。その理由はさまざまであるが、筆者は、「厳しい受験競争」、「狭い労働市場」、「徴兵制」にその主な原因があるのではないかと思う。海外へ早期留学する子どもの数は、最近韓国の経済情勢が厳しくなったことや早期留学の問題点等が指摘されることにつれ、ピーク時の1万8741人(10年)から8743人(16年)まで減っているものの、まだ9000人弱の子どもが親元を離れて海外で教育を受けている。さらに大学の学位取得や研修のために海外に留学している者は16年現在22万3908人で、14年以降再び増加している。
参考までに15年時点の海外への日本人留学生数は5万4455人であった。韓国の人口が日本の40%水準であることを考慮すると、韓国の留学生数の多さがうかがえる。
海外で教育を受けた若者が韓国に戻ってくれば、韓国社会のグローバル化が進み、韓国経済の発展にもつながるものの、多くの若者が韓国に戻ることを諦めている。例えば、米国で博士号を取得した韓国人は10年に1378人、13年に1383人で大きな差がなかったものの、韓国への復帰を選択した者は10年に621人から13年には334人まで大きく減少した。
また、米国の国立科学財団が発表した「15年博士号取得者に対する現状報告書」によると、05年から15年の間にアメリカで博士号を取得した韓国人のうち約6割が米国に残留することを希望しているという。
なぜ彼らは韓国に戻ることを希望しないのだろうか。その最も大きな理由として、米国に比べて劣悪な韓国の労働環境が挙げられる。つまり、賃金、福利厚生、能力発揮の機会、先進技術の習得という面において韓国が劣っているので韓国に戻ることを望まないのだろう。
さらに、兵役の義務も無視できない。韓国の男性にとって約2年間の兵役は、避けることができない人生の大きな関門である。徴兵制の影響で韓国国籍を捨てて外国の国籍を取得するケースも多いと考えられる。
状況は韓国国内も同じであり、20~30代の多くは「機会があれば韓国を去りたい」と考えている。正社員への就職が難しく、就職しても長時間労働が常態化しているため、
つづきは本紙へ