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2017/04/14

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第51回 ビジネス教養のための韓半島問題⑧                                                    多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

  • 多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部および同大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

◆緊迫感張り詰める半島情勢◆

 北朝鮮を取り巻く情勢は、緊迫感が張り詰めており、一触即発の状況となっている。北朝鮮情勢を分析する。1つは、北朝鮮は、国連の非難声明・制裁決議を無視して核実験や弾道ミサイル発射を続けるどころか、核・化学兵器搭載可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発も急いでいること。2つ目は、猛毒の神経剤VXを使用したマレーシアでの金正恩委員長の異母兄・金正男暗殺事件(2月)の真相が、解明されないままマレーシア政府と北朝鮮政府が共同声明(3月)を発表し、北朝鮮国民の出国を認めるとともに遺体を北朝鮮に引き渡すことになったこと。ただ、マレーシア・ナジブ首相は、「わが国で起きた重大な事件に対する警察の捜査は続けられる」と述べ、事件の捜査を継続する方針を示している。

 この暗殺事件は、北朝鮮の国家犯罪であるというのが大方の見方であるが、少数派であるが他の意見もある。例えば①北朝鮮国民は、恐怖政治による面従腹背で将来に希望もなく、絶望的であることから、金正恩委員長に恨みがあるテクノクラートたちが、自暴自棄になって金委員長を陥れるため殺害した。②北朝鮮の某機関が、金正恩委員長の意図を忖度して殺害し、抜け駆けの功名を狙った。北朝鮮は、主君へのいびつな忠誠心競争や英雄主義が蔓延っており、媚びを売って出世や褒美を狙う者が多い。まさしく「忖度の国家」である。③シンガポールの某インテリジェンスは、韓国大統領選挙を控えた重要な時期であることから、「北風」を吹かすために韓国の諜報員が北朝鮮の工作員を支援して殺害に至ったとの見方を示している。韓国と北朝鮮の二重スパイがいるとの噂も飛び交っている。「北風」が吹くと北朝鮮の脅威論が持ち上がり、北朝鮮との融和路線を図る進歩派ではなく、安全保障を重視する保守派が勝利する可能性が高まる。1987年の大統領選挙では、北朝鮮の金賢姫元工作員による大韓航空爆破事件などが与党・保守派の勝利に少なからず影響を与えたと言われている。④米国の某研究者は、金正恩委員長が全く影響力のない金正男氏を暗殺する理由が見当たらないし、メリットもない。襲ったことは事実であるが、悪いことが偶然に重なり、心臓麻痺などで意図せず死んでしまったのではないかと主張している。世界の北朝鮮研究者やインテリジェンスの中には、このような到底、理解しがたい意見や分析結果を真しやかに主張・報告する者もいる。3つ目は、韓米合同軍事演習(3月~4月)が過去最大規模となっているだけでなく、訓練内容が具体的かつ実践さながらであること。

 例えば「斬首作戦」は、韓米の150人規模の特殊部隊を金正恩委員長の極秘居所にパラシュートで降下して北朝鮮側に防戦する隙を与えず急襲し、一気に金正恩委員長の命を狙うというもの。これは、国際テロ組織「アルカーイダ」の最高指導者であるウサマ・ビンラーディン氏の殺害時と同じ方法である。また、極秘居所などに対するピンポイント爆撃をする作戦も立てており、これはわずか1機が第1波目の出撃で16~24カ所もの目標を葬り去ることができる。すなわち金正恩委員長の影武者が複数いたとしてもほぼ同時に急襲できることとなる。

 米国の対北朝鮮政策は、これまで戦略的忍耐(無視)の戦略を取っていたが、北朝鮮と非核化交渉と平和協定の議論を並行させる余地を残していた。しかしトランプ政権は、この最後の対話のチャンスをもう与えないという外交政策に転換した。4月7日から米国で開催されたトランプ大統領と習近平国家主席による米中首脳会談では、この八方塞がりの状況かつ過去最悪の事態の打開策が議論されると期待されている。打開策としては、米国の圧力強化策に中国が一定程度応じる一方、中国が米国に閉ざされた北朝鮮との対話の機会を新たに与えるよう促すと推測される。これは、4月7日に脱稿した時点での分析である。


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