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2017/05/19

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第52回 ビジネス教養のための韓半島問題⑨                                                    多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

  • 多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部および同大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

◆一触即発の状況続く北朝鮮情勢◆

 北朝鮮を取り巻く情勢は、緊迫感が張り詰めており、一触即発の状況が続いている。北朝鮮は、韓米両軍計32万人が参加する過去最大規模かつ「斬首作戦」など実践さながらの韓米合同軍事演習(3月~4月)を牽制すべく、6回目の核実験の準備を進めるとともに日本海に向けて弾道ミサイルを①3月6日4発(成功)、②3月22日1発(失敗)、③4月5日1発(失敗)、④4月16日1発(失敗)、⑤4月29日1発(失敗)、⑥5月14日1発(成功)、合計6回・9発を発射した。4月5日は、トランプ大統領と習近平主席による米中首脳会談の直前に発射したものである。

 一方、米国は、北朝鮮に対する圧力をさらに強めており、韓米合同軍事演習の最中、米原子力空母「カール・ビンソン」も投入した。「カール・ビンソン」は、4月にシンガポールの海域でオーストラリア軍と訓練をこなし、日本の海域で海上自衛隊の護衛艦「あしがら」「さみだれ」「いずも」と、韓半島の海域で韓国海軍のイージス駆逐艦「世宗大王」などとの共同訓練を行った。また、4月6日の米中首脳会談では、北朝鮮の暴走を食い止めることで一致したが、その方法については平行線である。中国は、あくまでも「平和的な方法」での解決を主張し、米朝が対話のテーブルに着くことを要求している。米国は、オバマ政権の「戦略的忍耐」は失敗したと結論づけており、発足後に北朝鮮政策の見直しに着手している。中国が、北朝鮮の核ミサイル開発を中止させるために協力しなければ、米国が単独で行動するとの方針を示している。ただ、習近平主席の米朝対話要求を意識してか、5月1日にトランプ大統領が、「状況が整えば金正恩委員長と会談する意向がある」ことを示した。

 他方、ロシアは、日米韓豪の軍事連携や急接近する米中を牽制するとともに、北朝鮮核ミサイル問題の対応方法で食い違う米中間の間隙を突いて漁夫の利を狙っている。今年5月からは、極東ウラジオストクと北朝鮮北東部の羅先間に貨客船「万景峰号」を使った定期航路を開設する。北朝鮮は、外貨獲得の目的でロシアで働く北朝鮮労働者や物資の輸送が強化されることになり、国連安保理による対北朝鮮制裁の「抜け穴」になる可能性がある。これは、北朝鮮との経済協力に前向きなロシアの姿勢を示すものであり、北朝鮮擁護に回ったと言っても過言でない。

 これを裏付けるロシアの対北朝鮮戦略として以下のものがある。例えば①2007年米国の金融制裁により北朝鮮のマカオの秘密資金口座が凍結された時に、ロシアが同国中央銀行などを経由した資金の返還を提案し、助けの手を差し伸べた。②16年1月プーチン大統領が、韓半島の平和のための仲裁者になると発言している。ロシア共産党機関紙プラウダは、「プーチンにはいかに南北を和解させるかについてプランがある」「米国は北朝鮮に新たな制裁を加えるが、プーチン大統領は南北首脳会談を準備している」と報じた。また、ロシア国営通信は、「対話に応じてやらないからだ」と北朝鮮を擁護し、国連安保理常任理事国であるロシアが経済制裁強化に「反対」した。プーチン大統領の狙いは、ロシア国境での親米国家誕生を警戒・阻止、韓半島をアジアシフトの戦略拠点化、ロシアの国際的地位の向上などが考えられる。

 北朝鮮が核ミサイル問題で強硬姿勢になればなるほど、当然、韓半島情勢が悪化するのであるが、これは韓半島の統一が遠のいているという見方もできるが、近づいているという見方もできる。そこで当事国をはじめ世界は、北朝鮮問題と韓半島の統一問題の解決策をどのように考えているのかを考察する。韓国は、14年「統一大当たり論」(統一に伴う特需論)を発表し、


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