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2017/10/13

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第57回 モンゴルと北朝鮮の関係から解決策を探る①                                                    多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

  • 多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部および大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

◆70年の外交実績で厚い信頼関係維持◆

 北朝鮮は、2017年9月3日に6回目の核実験を断行し、さらに中国地震局が9月23日に北朝鮮北部での地震発生を伝えたことから7回目の核実験の可能性が世界に向けて報道された。これは、核実験ではなかったが、7回目の核実験を予測する分析報告やメディア報道が相次いでいる。また、ミサイルの発射回数は、11年12月17日に金正恩政権が誕生して以来5年10カ月間で81回に達した。この内訳は、12年2回(うち失敗1回)、13年6回(うち失敗無し)、14年19回(うち失敗無し)、15年15回(うち失敗2回)、16年24回(うち失敗10回)、17年15回(うち失敗4回)。ミサイルの成功率は79%。日本の上空を通過したミサイルは、7回(1998年、09年・2回、12年、16年、17年・2回)である。

 この北朝鮮核ミサイル問題による米朝間の鍔迫り合いは、エスカレートし、「宣戦布告」という言葉まで飛び交うようになった。北朝鮮の李容浩外相は、9月19日国連総会での演説でトランプ大統領を「自殺行為」に突き進む、「誇大妄想にとらわれた、精神が錯乱した人物」と述べた。また、9月25日トランプ大統領の最近の発言は、「宣戦布告」とみなされると述べており、北朝鮮には米軍の爆撃機を領空外でも撃ち落とす権利があるとまで発言した。トランプ大統領は、同国連総会で「北朝鮮の完全破壊」に言及したほか、9月23日ツイッターで「北朝鮮の外相が国連で演説するのを今聞いた。もしリトルロケットマンの考えを繰り返すなら、彼らは長く続かない」とコメントした。

 一方、米国のティラーソン国務長官は、国連総会での暴言争いで最高潮に達した米朝間の緊張を対話局面に転換すべく動き始めている。ティラーソン国務長官は9月30日、中国で習近平国家主席と会談した後、記者会見で「北朝鮮と2~3つの情報の疎通ラインを開けておいた。ブラックアウトのような暗たんとした状況ではない」と述べた。また、「(北朝鮮の対話意志を)調査している。見守ってほしい。我々は、北朝鮮と(中国の仲裁なしに)直接的に対話する」と強調した。

 今号からは、北朝鮮の情勢分析方法と問題解決方法を日米以外の視点から考察する。まずは、筆者が、9月15日~18日に寺島実郎多摩大学学長をはじめとする研究者や経営者など23名でモンゴルを訪問し、同国外務省幹部・政治家・研究者などと議論する機会を得たのでモンゴルの視点から北朝鮮を分析する。モンゴル国(人口300万人、国土156万㌔・日本の4倍)は、46年に中国とソ連によって「モンゴル人民共和国」の独立が承認された。モンゴルの独立後、外交関係(国交樹立)を締結したのは、1番目に中国、2番目が48年北朝鮮であった。したがって来年は、蒙朝国交正常化70周年を迎える。この70年間の蒙朝関係を分析し、モンゴルの北朝鮮との向き合い方や北朝鮮問題に対する考え方からその解決方法を探る。モンゴルと北朝鮮は、70年間に及ぶ外交実績を積み上げており、厚い信頼関係で結ばれている。いくつかの外交成果やエピソードを紹介する。

 ①モンゴルは、50年~53年の韓国戦争時に共産主義国として北朝鮮の側に強く立ち、物質的および精神的に大きく支援した。例えば、家畜肉の援助や生きている馬を提供した。また、数多くの北朝鮮の戦争孤児たちをモンゴルが引き取って育てた。②モンゴルと北朝鮮は、政治家・テクノクラート・政党や民間の交流が、活発に行われている。故金日成主席は、56年と88年に2回、モンゴルを訪問している。また、故バトムンフ人民革命党書記長が、87年に北朝鮮を訪問し、世界の注目を浴びた。その理由は、金日成主席が殺害されたという噂が流れ、世界中で大騒ぎになっている最中に訪朝し、平壌空港で金日成主席の出迎えを受けることによって金日成主席の死亡説を一掃・否定したからである。モンゴルは、92年に社会主義・共産主義から資本主義・民主主義に転換したが、その後も蒙朝は友好関係を発展させている。モンゴルのバーバル財務大臣(当時)をはじめとする議員団が、97年に訪朝した。目的は、北朝鮮飢餓の支援であった。北朝鮮訪問の前に日本を訪問し、日本に余っているタイ米4㌧の北朝鮮への援助を頼み、その見返りに北朝鮮にいる1800人の日本人妻を日本訪問の約束を取り付けた。しかし、その後、


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