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2017/02/03

<オピニオン>転換期の韓国経済 第83回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 転換期の韓国経済 第83回

◆一山越えた感のある構造調整◆

 韓国の2016年の実質GDP成長率が2・7%(速報値)と、15年に続き2%台となった。今年も2%台になる可能性が高いため、韓国は低成長段階に入ったといえよう。

 低成長が続く主因は、中国の新常態への移行とそれに伴う新興国の成長減速を契機に、輸出が低迷したことである。輸出額(通関ベース)は15年、16年と2年連続、対中輸出額は3年連続で減少した。

 また、経済の成熟化や少子高齢化の進展、家計の負担増加(社会保険、債務返済など)に起因した民間消費の勢いの弱さも一因である。ASEAN諸国ではタイを除き、民間消費が5%前後で伸びているが、韓国では総じて成長率を下回っている。

 内外需のバランスのとれた成長が望ましいとはいえ、韓国では国内市場が小さいため、経済ならびに企業の成長には、輸出の拡大が不可欠とならざるを得ない。この点では、近年ベトナム向けが増加していること、また昨年11月以降、前年比プラスに転じたことは明るい材料である。

 輸出回復の進展が期待される矢先、米国トランプ新政権の政策が新たな不安要因として登場してきた。トランプ大統領はTPP(環太平洋経済連携協定)から離脱するための大統領令に署名したほか、NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉を開始すると表明した。その後、メキシコとの国境沿いに壁を築くように命じる大統領令に署名するなど、選挙公約を相次いで具体化している。

 このように、米国の通商政策が米国の利益を優先する方向に向かい始めた。今後考えられる韓国への影響として、①韓米FTA発効(12年3月)後に拡大している貿易不均衡に対する是正圧力が強まること、②中国に対する経済制裁が実施されれば、韓国の対中輸出が一段と減少すること、③メキシコに対する通商政策次第では、韓国企業のメキシコ事業が打撃を受けることなどであり、韓国企業にはその対応が求められる。

 韓国経済を再生させるには、海運や造船など不況業種での構造調整を円滑に進めながら、経済の革新を通じた新産業の育成、国内外での需要創出が必要となる。

 構造調整の影響の広がりに今後も注意する必要があるが、製造業全体でみると、構造調整は一山越えたと思われる。

 そう判断したのは、構造調整の対象となる企業数の増加に歯止めがかかったことである。とくに大企業は12年の36社から15年に54社へ増加した後、16年に32社へ減少した(上図)。また、中小企業も11年の77社から14年125社、15年175社と急増したが、16年はほぼ前年並みの176社にとどまった。

 さらに、製造業平均の営業利益率が15年の4・2%から16年に5・1%(数字は韓国銀行)へ改善したことも、構造調整の進展をうかがわせるものである。

 大企業の業績にも改善の動きがみられる。サムスン電子はギャラクシーノート7の発火による生産停止と補償の影響で、昨年7~9月期は大幅減益となったが、半導体事業の収益力の高まりもあって10~12月期に急回復し、16年通年の営業利益は前年比10・7%増となった。


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