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2017/02/24

<オピニオン>転換期の韓国経済 第84回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 転換期の韓国経済 第84回

◆輸出回復が進み出す中での不安◆

 近年、韓国では輸出の不振が続いたことにより、成長率が2%台へ低下した。輸出額(通関ベース)は15年が前年比8・0%減、16年が5・9%減となった。2年連続の前年比マイナスは、60年代以降では初めてである。とりわけ対中輸出額は14年0・4%減、15年5・6減%、16年9・3%減と、3年連続で減少した。

 輸出が低迷した背景には、中国の新常態への移行に伴い中国経済が減速し、これに伴い資源価格の下落、新興国経済の成長鈍化、世界的な貿易停滞が生じたことがある。韓進海運の破綻はその象徴的な出来事といえる。

 輸出額は昨年8月に一旦は前年比プラスに転じたものの、韓進海運の破綻や現代自動車のストライキ、ギャラクシーノート7の出荷停止などの影響が重なった結果、9月、10月と前年割れになった。これらの影響の剥落で、11月に再び前年比プラスに転じ、足元で増勢が強まっている。回復の牽引役は半導体である。ちなみに、16年の輸出総額に占める半導体の割合は12・6%であった。また、サムスン電子の10~12月期の業績回復をもたらしたのも半導体事業である。

 今後、輸出回復の進展が期待される一方、懸念されるのが、米国トランプ政権の通商政策のゆくえである。米国の利益を最優先した保護主義が強まれば、①韓国に対する貿易不均衡の是正圧力が強まること、②中国に対する経済制裁の実施に伴い、韓国の対中輸出が減少すること、③NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉を通じた協定の見直しにより、韓国企業のメキシコ事業が打撃を受けること、などが生じる可能性がある。NAFTAの再交渉は比較的早期に開始される見込みである。韓国に対して、トランプ政権がどのような姿勢で臨んでくるのかについて、意見が分かれている。マティス国防長官が来韓した際に、韓米同盟の重要性が再確認されたため、通商面でさほど強硬な姿勢をみせないのではないかという見方がある一方、通商政策と安全保障政策は別だとする見方もある。

 これに関連して最近、韓国が為替操作国に認定されるのではないかとの憶測が飛び交っている。米国では財務省が毎年2回、議会に対して為替操作報告書を提出している。為替操作国に認定されると、二国間協議が実施され、為替の切り上げや関税の引き上げなどの制裁を受ける可能性がある。①米貿易黒字が200億㌦以上、②経常黒字がGDPの3%以上、③1年間における為替介入の規模がGDPの2%以上という3基準をすべて満たすと、為替操作国に認定され、2つで監視リストに入る。16年10月の報告書では、韓国は中国、日本、台湾、ドイツ、スイスとともに監視リストに入っている。

 たしかに、韓国側も為替介入に関する情報を開示すべきであるが、米国が為替操作国を認定する際に使用している基準に必ずしも合理的根拠があるわけではないのも事実である。また、経済制裁や通貨の切り上げによって、米国の貿易赤字が縮小しないことは、これまでの歴史が示している。


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