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2017/10/20

<オピニオン>転換期の韓国経済 第92回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 転換期の韓国経済 第92回

◆韓国にとって重要性増すベトナム◆

 前々回に指摘したように、韓国政府のTHAAD配備決定に対する中国の経済報復の影響が韓国経済に現れている。中国の経済報復は短期的には韓国の景気にマイナスに作用するほか、中長期的には韓国企業の「脱中国」の動きを進めるものと考えられる。

 「脱中国」の動きは、中国での生産コスト上昇と競争激化などを背景に、数年前からすでに始まった。今回の経済報復はこの動きを加速させている。Eマートは今年6月、採算悪化を理由に、中国市場からの全面撤退を決めた。経済報復で打撃を受けたロッテグループはロッテマートを売却するなど、中国事業を縮小していく計画である。

 マクロ面でも、「脱中国」の動きの進展が確認できる。貿易面をみると、2014年から3年連続で中国向け輸出が全体の伸びを下回ったため、対中輸出依存度はピーク時である13年の26・1%から16年に25・1%へ低下し、17年(1~8月)は23・8%と、さらに低下した。

 また、中国向け直接投資額(韓国輸出入銀行調べ、実行額ベース)は14年以降伸び悩み、対外直接投資額全体に占める割合が低下していた。17年上期の投資額は前年同期比31・0%減と急減した。

 直接投資が輸出に及ぼす影響には、輸出誘発効果と代替効果がある。一般的には、海外での生産開始後しばらくの間は中間財の輸出が増加するため、中国以外への投資増加は対中輸出依存度の低下につながる可能性が高い。

 このように、韓国の対外経済関係において中国への依存度が低下している一方、重要性を増しているのがベトナムである。

 10年と17年の韓国の上位輸出先(通関ベース)をみると、中国、米国が1位、2位であることに変わりはないが、ベトナムが9位から3位へ急浮上したのが注目される。

 韓国の輸出額(通関ベース)は15年、16年と前年割れとなったが、ベトナム向けは2桁の伸びを維持した。今年に入って輸出が回復に向かうなかで、ベトナム向けの増勢が強まった結果、輸出額全体に占めるベトナム向けの割合は15年の5・3%から17年(1~8月)に8・2%へ上昇した。

 ベトナム向けが急増したのは、韓国企業による直接投資の増加に伴い、韓国から中間財の輸出が伸びたことが大きい。韓国のベトナム向け直接投資額は近年増加傾向にあり、全体に占める割合も10年の3・5%から16年に6・4%へ上昇した(上図)。

 最近では、サムスングループに続き、LGグループが投資を本格化させているのが注目される。LG電子はベトナムを韓国、中国につぐ三大グローバル生産拠点にする戦略にもとづき、ハイフォンに新たに大型複合工場(ハイフォンキャンパス)を建設し、テレビ、スマートフォン、洗濯機などの生産を15年に開始した。生産の統合を進めるために、ベトナムの古い工場を閉鎖したほか、タイでのテレビ生産をベトナムにシフトした。

 LGディスプレイが最近ハイフォンの工場でディスプレーの生産を開始したのに続き、LGイノテックがカメラモジュールを18年に生産開始する計画である。


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