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2017/01/01

<オピニオン>アナリストの眼                                                             アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

  • アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

    かさい・のぶゆき 1948年、神奈川県生まれ。国際開発センター研究員、ソウル大学経済研究所客員教授、秀明大学大学院教授を経てアジア経済文化研究所理事・首席研究員。

◆経済課題への新たな取り組みを◆

 2017年の韓国経済を展望する多くの見解は悲観的である。

 昨年暮れの朴槿惠大統領に対する弾劾議案の可決により、韓国の不確実性がさらに高まっているからである。かつて成長期の景気回復パターンは、輸出回復から始まりその増加が国内生産を刺激し、やがて消費を引き上げる形で輸出・投資・消費の好循環を描いてきた。しかし、その循環は今や期待できないのみならず、新しい好循環も見当たらない状況だ。

 成長牽引役であった輸出の対前年同期比増加率は、2015年でマイナス9・1%と14年の2・0%からマイナスに転じ、16年には毎月前年を下回り、10月でもマイナス5・1%の状況で、輸出牽引力低下が定着している。

 今年にもこうした現象が続く可能性は高く、その背景にはアメリカ新大統領候補の保護主義傾向や、中国市場での民族企業との競合やコスト上昇、OPEC(石油輸出国機構)の減産方向打ち出しによる原油、天然ガス、石炭を含むエネルギー価格上昇の新興市場への影響など、韓国の主力市場が期待されないからである。

 内需不振も深刻である。本来景気回復を主導するのは国内市場であるが、韓国は外需拡大が優先されてきたため国内市場の成熟が遅れ、そのため成長牽引力は外需より弱い。これを回復させるためには構造改革によらなければならないが、政権の政策力低下が足枷となっている。17年も半年間は首相による代行運営が続くことにより、経済的不確実性が景気回復を遅らせることになろう。研究機関の経済成長率予測も軒並み2%台に引き下げられている。

 産業分野では、鉄鋼業は中国の追い上げなどでポスコが赤字を出すなど経営状況が悪化し、造船では大宇造船の経営危機や新規受注の減少など経営環境が悪化している。海運でも韓進海運の法定管理や現代海運の危機状態により物流分野での苦戦が続いている。

 主導的地位にあるサムスンのスマホ事業での発火事故とリコールによるダメージや現代自動車のアメリカ、中国での減少傾向、国内での営業利益低下など産業・企業分野の回復も輸出不振にともなう製造業稼働率の萎縮とともに2017年でも苦しい状況が続くだろう。

 国民生活も成長率が低下すればさらに困窮するかも知れない。労働生産性は前年比で見ても継続してマイナスが続き、単位当たり生産規模が落ちている。つまり、労働機会の減少が生産性を引き下げているため、雇用低下、非正規労働の増大、特に若年失業率の大幅低下など国民の所得原泉が失われているためである。


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