◆新政権の経済回復戦略とは◆
5月10日に文在寅大統領が発足して約3週間が経過した。約半年間の政治空白がようやく戻った。組閣には時間がかかるものの、同日には初代首相候補に李洛淵・全羅南道知事を、秘書室長には任鍾晳・元議員を、国家情報院長には徐薫・元国家情報院3次長を指名した。首相と秘書室長、国家情報院長は「主要3ポスト」と言われる重要人事であり、その後青瓦台人事などが徐々に進められている。
文在寅新政権は停滞した現状をどのような対応策で回復するのであろうか。これまでの新大統領の公約等を見てみよう。現代経済研究院が発行した『新政府の経済及び対北政策期待効果』を参照して整理してみたい。先ず、四大ビジョンとして、①国民が主役の大韓民国、②共に成長する大韓民国、③平和で安全な大韓民国、④持続成長可能で活気に満ちた大韓民国を掲げている。朴槿惠政権では「私の夢が叶う国民幸福国家」の創造で、国民一人一人が実感できる幸福感をもたらす政治を志向した。そのため「信頼と公正」に基づいた成長・雇用創出、福祉拡大、経済民主化に取り組むことで国民幸福国家を達成すると主張した。どちらのビジョンも国民主体、公平と成長という点では変わらないが、文在寅ビジョンは北朝鮮との関係がより強く出て国防を背景においた主張が特徴的である。これに対し朴槿惠ビジョンは民主化、とりわけ財閥構造改革を狙った主張が際立つ。
四大ビジョンの下にある具体的政策項目を見ると以下の通りである。
①成長=潜在成長率が2%台初に下落する中で、1人当り国民所得が長期間2万㌦台から脱することができないという現状にあることから、働き口・所得拡大を基盤とした成長構造確立、未来型及び主力産業育成を通じる低成長脱出、社会的統合及び福祉公平性を強調する持続可能な成長を追求する政策を拡大する。
②産業=国内主力産業はすでに成熟期に入りながらもその成長加速度が停滞している一方で、ドイツや米国では第4次産業革命(情報技術を駆使した製造業の革新、インターネット工場)の登場など産業環境が目まぐるしく変化している。したがって、第4次産業革命の準備など未来型の新しい成長動力を拡充して、製造業及び主力産業の競争力強化を通じて経済強国にジャンプアップする。
③通商=価格要因に基盤を置いた低付加価値輸出構造で新興国の追い上げに脆弱な状況で、最近の世界的な保護主義の高まりで通商圧力が強化される環境にある。こうした状況に抗するには、国内輸出競争力確保及び通商対応力強化を図るために輸出構造高度化、中小企業の韓国型ヒドゥンチャンピオン(規模は小さいけれども差別化された競争力を基に世界市場を支配する優良企業)化、通商組織力の強化などの政策が打ち出されている。
④雇用=労動市場は雇用創出力が大きく低下しているうえに、勤労条件改善が不充分で労動市場の二重構造が持続的に拡大している。こうした状況からの脱出のため、新政府の雇用政策は公共部門の新規採用と雇用シェアを通じた新規雇用創出、労動時間短縮及び最低賃金引き上げなどを通じる労働条件の改善、労動市場の構造改善など包括的な労動市場対策を打ち出している。
⑤福祉=福祉支出規模が経済規模に比べて少なく福祉に対する要求が拡大する中、生活費負担が持続的に増大するため、生活費支出が内需沈滞の原因となっている。そこで、低所得層への所得支援及び生活保障制度を強化する。そして障害者、多文化家族(外国人労働者家族)など社会的弱者に対する支援の強化。住居問題を解決して住居費負担及び家計生活費を節減する等の公約も発表している。
⑥人口構造=合計特殊出産率は全世界最下位水準(188位)で年寄り人口の急増で高齢化社会が目前に迫っている。高齢者の安定的老後生活定着のために差別のない基礎年金30万㌆を支給して高齢者の雇用労働を増やす。国民年金、退職年金などを通じて老後所得補償を強化し、高齢者の健康を増進するための事業を拡大する。公教育費用の国家負担、子供の面倒を見る負担の解消、私教育費軽減などの子供教育費用負担緩和のために努力する。育児休職拡大、柔軟勤務制(フレックスタイム)導入などを通じて仕事と家庭の両立を支援する。妊娠出産支援を拡大して低出産専門機構を設置する。
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