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2018/07/13

<オピニオン>転換期の韓国経済 第101回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 転換期の韓国経済 第101回

◆トランプショックに揺れる韓国経済◆

 現在、世界各国は「米中貿易戦争」のゆくえを、固唾を呑んで見守っている。とくに韓国経済は輸出への依存度が高い上、輸出全体に占める対中輸出の割合が高いため、貿易戦争が激化すれば、甚大な影響を受ける。それを象徴するのがウォンの動きである。6月18日、トランプ大統領は、中国が米国の追加関税(500億㌦相当の中国製品に対する25%の追加関税)に対抗措置を講じれば、さらに2000億㌦相当の輸入製品に対して10%の追加関税を課すと警告した。これを機にウォンが売られ、6月14日の1㌦=1070㌆台から29日に1120㌆台へ急落した。

 韓国の対中輸出依存度は13年の26・1%から17年に24・8%へ低下したが、今年上半期は米国とベトナム向け輸出が伸び悩んだ結果、同依存度が26%台へ再上昇した。近年、過度な対中依存を是正する動きを強めていただけに、皮肉な結果である。

 韓国の対米輸出は17年の前年比3・2%増に続き、今年上半期はほぼ前年並みにとどまった。輸出が低調な要因として、主力輸出製品である自動車・同部品の不振(上図)、トランプ政権の保護主義の影響が指摘できる。

 今年1月、米国は米通商法201条にもとづき、大型洗濯機と太陽光パネル(主な輸入先は韓国、中国)に対するセーフガードを発動した。大型洗濯機の場合、120万台までは20%、それを超える台数には50%の関税が課されることになった。

 また、1月に開始された米韓FTAの再交渉の結果、韓国は米国の要求を大幅に受け入れることになった。その主なものは、①鉄鋼製品の輸出に数量枠(過去3年の輸出量平均の70%)が設定された、②当初合意していた21年の貨物自動車に対する関税撤廃(米国側)の時期が41年に延期された、③米国の安全基準適合車の韓国への輸入台数が5万台へと引き上げられた、④韓国が為替介入の透明性向上を図る、ことなどである。

 これらの点を踏まえると、韓国の対米輸出はしばらく伸び悩む可能性が高い。この上、米中貿易戦争の激化で中国の輸出が減速すれば、韓国の対中輸出にもブレーキがかかり、輸出失速の恐れが出てくる。さらに、中国が「製造2025」にもとづき、産業の高度化を図れば、現在の韓国経済を牽引している半導体産業にも影響(供給過剰、輸出の減少など)が及ぶ。これが、市場が警戒する最悪のシナリオである。

 輸出の先行きが不透明になるなかで、内需はどのように推移していくのであろうか。まず、民間消費は底堅く推移しつつも、年後半に鈍化していく可能性がある。原油価格の上昇とウォン安に伴う輸入物価の上昇により、インフレ圧力が強まるからである。インフレ抑制と米国との金利差縮小を目的に、利上げが実施されることも予想される。

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