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2018/08/03

<オピニオン>転換期の韓国経済 第102回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 転換期の韓国経済 第102回

◆どうなる今後の文在寅政権の経済政策◆

 最近、韓国の景気先行きに対して悲観的な見方が増えている。この背景には、①今年に入り雇用者数の増加幅が大幅に減少したこと、②米中貿易戦争により輸出環境が悪化していること、③先日発表された4~6月期のGDP統計の内容が良くなったことがある。

 4~6月期の実質GDP成長率(速報値)は前期比(以下同じ)0・7%と、1~3月期の1・0%を下回った。輸出は0・8%増であったが、建設投資1・3%減、設備投資6・6%減と、投資が落ち込んだ。ただし、建設投資は住宅投資抑制策と五輪特需の剥落などの影響で昨年半ば以降減速傾向にあったこと、また設備投資は昨年著しく伸びた(半導体が牽引)ことから、今期のマイナスはある程度予想されたものである。

 問題は民間消費の低迷である。民間消費は1~3月期0・7%増、4~6月期0・3%増と、全体の成長率を下回り(上図)、所得主導型成長を看板に掲げた文在寅政権にとっては極めて厳しい結果になっている。

 文在寅政権の経済政策は所得主導型成長、公正な経済の建設、革新成長の3つの柱から構成されているが、これまで最も力を入れてきたのは所得主導型成長である。これは、最低賃金の引き上げ、公共部門を中心にした雇用創出、非正規から正規職への転換などを進める一方、生活費の負担(住宅、養育、交通など)軽減を図って可処分所得を増やし、消費を拡大させることにより成長につなげることである。これに沿って、18年の最低賃金が大幅に引き上げられたほか、多くの財政資金が福祉・雇用分野に投入されてきた。しかし、政策の成果が表れる前に、最低賃金大幅引き上げの副作用が表れた。昨年秋口あたりから従業員の削減や自動化の動きが広がり、今年上半期の雇用者数は、卸・小売、宿泊・飲食などで前年よりも著しく減少した。

 小商工人から、来年の最低賃金が引き上げられた場合、それを守る意思がないとの声明が出されたにもかかわらず、最低賃金委員会は今年比10・9%引き上げることを決定した。2年連続の二桁増である。

 政府は7月中旬の経済閣僚会議で、今年の経済成長率を従来の3・0%から2・9%へ、雇用者数の増加幅を32万人から18万人へ下方修正する一方、①最低賃金引き上げの影響を緩和する雇用安定資金を来年も支給すること、②勤労奨励税制の対象者と支給額を拡大すること、③所得下位20%の高齢者に対する月30万㌆の基礎年金の支給を3年前倒して、19年から開始することなどを含む経済政策を発表した。文在寅政権が一時期よりも革新成長を重視してきたのは評価できるが、ここに挙げた政策をみると、財政資金の投入で所得の底上げを図り、所得主導型成長をなんとしても実現させようとしていることがわかる。しかし、これが消費の増加につながる保証はない。インフレや雇用環境の悪化、将来への不安などの影響を受けるからである。

 そもそも所得分配や財政資金に依存した成長は持続可能ではないことに加え、韓国では急速な高齢化により社会保障支出の増加が避けられないため、財政資金に依存した所得主導型成長政策を続けて、それが失敗すれば、財政赤字が急拡大する恐れがある。

 文在寅政権が政策を変えることができない理由としては、


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