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2018/03/09

<オピニオン>曲がり角の韓国経済 第29回 韓国から学ぶ無期転換ルール導入の課題                                                      ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

  • ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

    キム・ミョンジュン 1970年仁川生まれ。韓神大学校日本学科卒。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て現在、ニッセイ基礎研究所准主任研究員。

◆雇用保障のみならず処遇改善が切実◆

 日本では、2013年4月に改正労働契約法が施行されたことにより、今年の4月から、契約社員やパート・アルバイト、そして派遣社員のような有期契約労働者を対象に、「無期転換ルール」がスタートする。無期転換ルールとは、「有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、パートやアルバイトなど雇用期間が定められている有期契約労働者の申し込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルール」である。改正労働契約法が施行されると、多くの労働者が無期雇用に転換できる権利を手にすることになるものの、実際はどうなるのだろうか。日本より先に無期転換ルールを導入した韓国の事例をみてみよう。

 韓国では、IMF経済危機以降企業の雇用調整が加速化し、労働者に占める非正規労働者の割合が急速に増加し始めた。韓国政府は非正規労働者の実態を把握するために03年から実態調査を行い、その結果労働者の3割以上が非正規職として労働市場に参加していることがあきらかになった。特に、彼らの多くは、不安定な雇用に付随する劣悪な労働条件に苦しんでいた。

 問題の深刻性を認識した韓国政府は非正規職の乱用を抑制するとともに、非正規職に対する不合理的な差別を是正することなどを目的に、04年ごろから関連法の制定を準備し始め、ついに07年7月に「期間制および短時間労働者保護等に関する法律(以下「非正規職保護法」)を施行した。「非正規職保護法」には、2年を超える契約労働者は期限の定めの無い「無期労働契約」に転換し、直接雇用することを経営側に義務付けることや賃金や労働条件などにおける不合理な差別を禁止すること、そして差別を受けた非正規職員は、労働委員会に是正命令を求めることができることなどの内容が含まれていた。

 韓国の「無期転換ルール」が日本と大きく異なる点は、①「無期転換」が適用される通算契約期間(同一の使用者との間で締結された有期労働契約の契約期間を通算した期間)が日本は5年であることに比べて韓国は2年であること、②日本は条件を満たしている有期契約労働者の申し込みにより無期労働契約に転換されることに対して、韓国は申し込み無しで無期労働契約に転換されることである。

 では、韓国において「非正規職保護法」が施行されてから状況はどのように変わっただろうか。まず、雇用者に占める非正規労働者の割合の変化からみて見よう。04年8月に37・0%であった非正規労働者の割合は、非正規職保護法の施行直後である07年8月には35・8%まで減少した。しかしながら、04年8月以降非正規労働者の割合は減少傾向にあったので、非正規職保護法の施行が非正規労働者の割合の減少に影響を与えたとは断言できない。だが、07年8月以降も非正規労働者の割合は減少し続け15年3月には31・9%で、本格的に調査を始めた04年以降最も低い水準を記録した。しかしながら、その後は再び増加し、17年8月には32・9%で、12年8月の33・2%以降5年ぶりの高い水準となった。

 韓国における「非正規職保護法」の施行が、非正規労働者の割合の減少や無期労働契約の増加に多少の良い影響を与えていると言えるものの、その効果は韓国政府が期待したほど大きくはなかった。つまり、2年を迎える時点で有期契約者の雇止めが発生し、彼らが担当していた仕事が外注化されるケースが頻発した。その代表的な例が07年6月に起きた「イーランド争議」である。韓国の量販店「ホームエバー」を運営していたイーランド・リテール社は、「非正規職保護法」が施行される目前に2年以上働いている有期契約労働者1100人のうち、521人の正規職転換を発表したものの、契約が満了される350人に対しては再契約をしないことを通知し、彼らが担当していたレジ部門などを外注化することを決めた。会社の駆け込み的な雇止めに反対して主婦を中心とした組合員たちは座り込みストライキに突入した。その後、ストライキは510日も続けられ、ようやく08年11月13日に終結を迎えることになった。「イーランド争議」は、


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