ここから本文です

2018/06/08

<オピニオン>曲がり角の韓国経済 第32回 増加する韓国の外国人労働者と少子高齢化                                                      ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

  • ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

    キム・ミョンジュン 1970年仁川生まれ。韓神大学校日本学科卒。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て現在、ニッセイ基礎研究所准主任研究員。

◆安心して働ける環境構築が目下の急務◆

 韓国では最近、少子高齢化による生産年齢人口の減少に対する対策の一つとして外国人労働者を受け入れようとする動きが広がっている。韓国における在留外国人の数は、2016年12月末現在204・9万人で、前年に比べて8・5%増加している。在留外国人の数が200万人を超えたのは統計を集計して以降初めてで、人口に占める在留外国人の割合も12年の2・84%から16年には3・96%まで上昇している。国籍別では、中国が101・7万人(49・6%、韓国系中国人が61・7%)で最も多く、次いでベトナム(14・9万人、7・3%)、アメリカ(14・0万人、6・8%)、タイ(10・1万人、4・9%)の順となっている。性別では、男性が54・5%(111・7万人)で女性の45・5%(93・2万人)を上回っている。そして、年齢階層別(5歳刻み)では25~29歳が16・3%で最も多く、次いで30~34歳(14・5%)、 20~24歳(10・6%)、 35~39歳(10・2%)の順である。

 一方、統計庁の「外国人雇用調査」によると、16年5月現在、韓国における15歳以上の外国人数は142・5万人で、前年と比べて5・1万人増加した。15歳以上の外国人のうち、就業者は96・2万人(男性63・8万人66・3%、女性32・4 万人33・7%)で、前年より2・5万人増えている(外国人の雇用率は67・6%で、失業率は4・2%)。年齢階層別には、30~39歳(28・1万人)、20~29歳(25・3万人)、40~49歳(18・8万人)が多く、60歳以上は6・4万人で少なかった。

 韓国で在留外国人及び外国人労働者が急激に増加し始めたのは、韓国政府が04年8月に、「外国人勤労者の雇用などに関する法律」を施行し、「外国人産業技術研修生制度」を「雇用許可制」に転換・実施してからだと言える。では、なぜ韓国政府は雇用許可制を導入するなど、外国人労働者の受け入れに積極的な政策を実施したのだろうか。その最も大きな理由としては、①出生率低下による将来の労働力人口の減少と成長率低下に対する懸念が増加したことと、②日本をモデルとした「外国人産業技術研修生制度」の問題点が深刻化したからである。

 韓国の出生率は 1950 年代後半を頂点として急速に低下し、1983 年以降は、人口の置き換え水準である2・1を下回る状況が続いている。特に、05年には出生率が1・08まで低下した。韓国政府は少子化の問題を解決するために、06年から「セロマジプラン」という少子高齢化対策を実施し、10年間にわたり、莫大な予算を投入したものの、16年の出生率は1・17であまり改善されていない。同期間における日本の出生率が1・32から1・44に改善されたことと比べると、韓国の出生率の改善度の低さが分かる。さらに、韓国統計庁が今年の3月28日に発表した「17年出生・死亡統計暫定結果」によると、17年の合計特殊出生率は1・05人で、これまで最も低かった05年の出生率1・08人を下回った。一方、16年における韓国の高齢化率は13・2%で、日本の27・3%に比べてかなり低い水準であるものの、高齢化率のスピードが速く、60年には高齢化率が41・0%まで上昇することが予想されている。17年に発表された日本の将来人口推計による60年の日本の高齢化率38・1%を上回る数値である。出生率が低下し、高齢化率が高まると労働力人口の減少は避けられない。従って、将来の労働力人口の減少とそれによる成長率の低下を懸念した韓国政府は既存の消極的な外国人労働者受け入れ政策を積極的に転換することになったのである。

 外国人労働者受け入れ政策を積極的に転換したもう一つの理由としては、日本の「技能実習生」をモデルとした「外国人産業技術研修生制度」が「現代版奴隷制度」と呼ばれるほど様々な問題点が漏出された点が挙げられる。ブローカーによる送り出し過程の不正により、


つづきは本紙へ


バックナンバー

<オピニオン>