◆既存の法令や社会規範の遵守、速度の調整が必要◆
韓国の最低賃金委員会は7月14日に2019年の最低賃金を18年より10・9%引き上げた時給8350㌆(約835円)にすることを決めた。18年の引き上げ率16・4%には至らなかったものの、2年連続の2桁台の上昇であり、2年間の引き上げ率は29・1%に達する。同期間における日本の最低賃金(全国加重平均)の引き上げ率が6・2%であることを考慮すると、韓国の引き上げ率の高さが分かる。今後、日本の厚生労働省に当たる雇用労働部の長官が公示をすれば、最低賃金の引き上げ率は来年1月から適用され、日本の最低賃金(全国加重平均)の時給848円に迫る。さらに、大多数の労働者に支給が義務付けられている週休手当(1週間の合計労働時間が15時間以上の労働者に支給する1日分の手当)を含めると、最低賃金は1万㌆を超え、日本の最低賃金を上回ることになる。
文在寅大統領は、大統領選挙で、20年までに最低賃金を時給1万㌆までに引き上げると公約しており、最近の高い引き上げ率はその実現を目指しているだろう。ただし、その実現のためには20年までに毎年16%以上最低賃金を引き上げる必要があり、今回の引き上げ率10・9%では20年までに最低賃金1万㌆を達成することは難しい。これに関連して文在寅大統領は7月16日に20年までに最低賃金を1万㌆まで引き上げる公約は守ることができなくなったと謝罪した。
最低賃金の引き上げに関しては企業の反発も大きい。小商工人生存権運動連帯は8月29日にソウルの光化門広場で、最低賃金の引き上げ政策に反対する集会を開き、文在寅政権が推進する急激な最低賃金の引き上げ政策を強く批判した。食堂、コンビニ、美容室、ネットカフェなどを経営する全国から集まった自営業者は、最低賃金引き上げの速度調節と最低賃金を規模や業種別に差別適用することを要求した。
最低賃金が雇用に与える影響については専門家の意見も分かれている。韓国労働研究院(KLI)は、最低賃金の引き上げが18年1月から3月までの雇用量と労働時間に与えた影響を推計し、雇用量に与える効果は統計的に有意ではないと発表した。また、8月2日に発表した報告書「18年上半期の労働市場評価と下半期の雇用展望」では、「最低賃金は限界に直面した一部の部門で部分的に雇用に否定的な効果をもたらした可能性はあるものの、上半期の雇用鈍化の主な要因ではないと判断される」と主張した。
一方、韓国開発研究院(KDI)は6月4日に最低賃金と関連した報告書を発表し、「最低賃金引き上げの速度調節論」を提起した。この報告書では、最低賃金を毎年15%ずつ引き上げると、最悪の場合、19年には9・6万人、20年には14・4万人まで雇用が減少する恐れがあるという推計結果を出した。
では、実際の雇用状況はどうだろうか。参考までに、最低賃金が16・4%に引き上げられた18年1月からの対前年同月比就業者数の増加幅を見ると、18年1月には就業者数が対前年同月に比べて33・5万人まで増加して、17年1月の増加数23・2万人を上回ったものの、18年2月~6月までの対前年同月比就業者数は17年2月~6月を大きく下回っている。
韓国統計庁が8月17日に発表した「18年7月雇用動向」 によると、
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