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2018/10/05

<オピニオン>曲がり角の韓国経済 第36回 韓国から学ぶ無償保育導入の課題                                                      ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

  • 曲がり角の韓国経済 第36回 韓国から学ぶ無償保育導入の課題                                                      ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

    キム・ミョンジュン 1970年仁川生まれ。韓神大学校日本学科卒。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て現在、ニッセイ基礎研究所准主任研究員。

◆教育格差が社会問題にならぬよう十分な対策を◆

 日本では、幼児教育・保育の無償化が2019年10月からスタートする。無償化の対象は認可保育施設に通う住民税非課税世帯の0~2歳児と、幼稚園や保育所に通う3~5歳児の全員であり、認可外は上限を設けて補助する方針である。日本が無償保育を実施するのにおいて注意すべき点は何だろうか。日本より先に無償保育を実施した韓国の事例をみてみよう。

 韓国では、1991年に「嬰幼児保育法」が制定されてから、保育への関心が高まり、92~2003年には、満0~5歳の児童を養育する子育て世帯に対して所得を基準とする「差等保育料」が支給された。その後、04年からは支援対象が段階的に拡大され、都市労働者世帯の平均所得の50%以下の世帯に、そして、06年からは都市労働者世帯の平均所得の70%以下の世帯まで保育料の支給対象が拡大された。さらに、11年からは、満0~5歳の児童を養育する所得下位階層70%以下までが支給対象に含まれ、ついに13年からはすべての所得階層に保育料を支給する無償保育が実現されることになった。

 韓国における嬰幼児支援政策は、雇用労働部、教育部、保健福祉部、女性家族部により実施されており、17年時点の嬰幼児養育支援政策の予算額は、9兆5277億㌆で10年の2兆7200億㌆に比べて約3・5倍も増加した。07年の予算額の中にオリニジプ(日本の保育園に当たる)や幼稚園のような施設に支給された金額の割合は86・2%で、子育て家庭に支援される金額の割合13・8%を大きく上回っている。そして、対GDP比保育財政は、10年の0・49%から15年には0・89%に増加した。

 子育て世帯に支給される韓国政府の助成金は大きく「保育手当」と「養育手当」に区分することができる。保育手当は、オリニジプを利用する満0~5歳の児童がいる子育て世帯に支給される助成金であり、養育手当はオリニジプや幼稚園を利用していない就学前の児童を育てる子育て世帯に支給される助成金である。オリニジプを利用する際の助成金は、親保育料と基本保育料、そして緊急保育バウチャーという形で提供されている。

 18年8月現在における年齢別の親保育料(月額)は、「終日利用クラス(1日12時間利用)」の場合、満0歳が44万1000㌆、満1歳が38万8000㌆、満2歳が32万1000㌆に設定されている。また、「短時間利用クラス(1日6時間利用)」の親保育料(月額)は、満0歳が34万4000㌆、満1歳が30万2000㌆、満2歳が25万㌆になっている。一方、基本保育料(月額)としては、満0歳に43万7000㌆、満1歳に23万8000㌆、満2歳に16万1000㌆が支給されている。さらに、満3~5歳に対する助成金は、終日(7時30分~19時30分)と夜間利用の場合は22万㌆を、24時間利用の場合は33万㌆を支給している。養育手当の助成金(月額)は、満12カ月未満には20万㌆が、満24ヶ月未満には15万㌆が、そして、満36カ月未満~就学前には10万㌆が支給される。

 では、韓国政府が実施した保育料支援の拡大政策はどのような効果をもたらしただろうか。いつくかの分析結果によると、


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