◆「情けは人の為ならず」◆
日本の文化庁が平成22年度の「国語に関する世論調査」で「情けは人の為ならず」の意味を尋ねた結果、次のような結果が出た。(ア)人に情けを掛けておくと、巡り巡って結局は自分のためになる45・8%、(イ)人に情けを掛けて助けてやることは結局はその人のためにならない45・7%、(ア)と(イ)の両方4・0%、(ア)(イ)とは全く別の意味1・9%、(ウ)分からない2・6%。正解は、「情けは人の為だけではなく、いずれ巡り巡って自分に恩恵が返ってくるのだから、誰にでも親切にせよ」、つまり(ア)で、情けをかけるのは人のためでない(=自分のためである)というわけだ。にも拘らず、正解者と同数がその反対の意、すなわち「情けをかけることは、結局その人の為にならないので、すべきではない」と思っている。この意の正しい表現は「情けは人の為なるべからず」である。両者の違いを分かりやすく言えば、「人の為ではない、自分の為だ」と「人の為にならない」の違いで、後者に関する諺には「情けは質に置かれず」(経済的な意味のない情けは役に立たない)とか、「情けが仇」などがある。
この場で問いたいのは、「諺の正しい意味」ではなく、この二つの紛らわしさを考慮して韓国の最低賃金導入に当てはめて見るとどう言えるのかである。最低賃金法の目的は、「勤労者に対し賃金の最低水準を保障して勤労者の生活安定及び労働力の質的向上を図ることにより、国民経済の健全な発展に尽くすことを目的とする」となっている。つまり、最低賃金を保証することだけでなく、そのことにより労働者の生活を保障するとともに、彼らの労働技術を向上させることで労働生産性を高め、健全な経済発展を達成することを意味する。その場合、勤労基準法の目的である「憲法に基づき勤労条件の基準を定めることにより勤労者の基本的生活を保障し、向上させることにより、バランスがとれた国民経済の発展を図ることを目的とする」という精神が尊重されるべきことはいうまでもない。
さて、このような法的解釈の上で考えると、2018年から最低賃金を導入したことにより下層所得者、すなわち最低賃金水準以下で就業していた所得者の賃金が実質上上がり、生活安定に寄与し、消費水準の回復方向へ入るはずである。そのことは労働者の生産性向上にも影響を与え、企業活動の活性化や雇用の増加にも寄与すると考えられていた。いうまでもなくこうした経済効果を生み出すにはそれなりの時間と効果促進努力が必要であるため、短期的期待は禁物であろう。
最近よく使われる掲げた表を見ると、そうしたいわば短期的弊害が明確に出ている。18年に入り失業率が3%台から4%台に引き上がっている。最低賃金導入の影響が出た2月には4・6%の高失業率に達し、以降漸減傾向にはあるものの4%台を維持し高止まりしている。例えば4月の就業者数は2686万8000人で、前年同月比の増加幅は12万3000人と3カ月連続で10万人台となり、1月の3万4000人の三分の一にまで低下し、さらに5月には就業者数2706万4000人で、前年同月比で僅か7万2000人しか増加しなかった。このように、4カ月も連続で20万人を下回るのは、リーマン・ショックの影響が大きかった08年9月~10年2月以降では初めてであると指摘されている。つまり、10年に一度の雇用危機が最低賃金導入で起こったことになるのだ。
最低賃金導入の時期としては、
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