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2018/07/27

<オピニオン>韓国経済講座 第207回                                                        アジア経済文化研究所 笠井 信幸 筆頭理事

  • アジア経済文化研究所 笠井 信幸 筆頭理事

    かさい・のぶゆき 1948年、神奈川県横浜生まれ。国際開発センター研究員、ソウル大学経済研究所客員教授、秀明大学教授。アジア経済文化研究所筆頭理事・首席研究員、育秀国際語学院学院長。

◆韓国では日本で就業、日本では次世代教育◆

 「就職難の韓国と求人難の日本の財界が協調し、日本で就職する韓国人がはじめて2万人を超えている」との報道がなされるほど韓国若者の国内就業難が深刻だ。

 では日本人若者の就業は楽なのかといえば、必ずしもそうではない。それはそれなりに大変だ。要するにこれは量的に就業者と受け入れ企業の数の対比であり、そこには一生を左右する、望む仕事や企業内容などのいわば質的側面は考慮されていないからである。

 こうした状況把握に用いられる概念を「有効求人倍率」と言い、求職者1人当たり求人件数を示すものである。

 今年に入り日韓の有効求人倍率に格差が広がっていることが、韓国の若者の日本就業を促しているのだ。その数値は、日本の2018年3月基準でみると1・6倍となり、韓国のそれは0・6倍だ。分かりやすく言えば、日本では就職希望者100人が就職できる雇用機会が160カ所あり、機械的に当てはめると60カ所も雇用不足が発生している。

 つまり60の雇用は労働者を求めても得られない状態なのである。これに対し、韓国では就職希望者100人が就職できる雇用機会が僅か60カ所しかなく、100人中40人は働き口がないことを意味している。

 しかもこうした状況がかなり続いておりそれだけ働き口のない者が累積されている状況なのである。

 冒頭の報道は、かかる事態に対して「韓国産業人力公団や韓国貿易協会、雇用労働部など韓国の政府機関が日本の人材紹介会社と協力して、韓国の若者の日本就職を推進。17年には就業ビザを得て日本で就職した韓国人は、はじめて2万人を超え2万188人に達している」というわけで、日韓協力労働市場の形成の可能性を高めながら、未就業者の送り出し戦略が進みつつあるのである。

 他方、受け入れ市場では、在日の韓国人、中国朝鮮族の次世代(39歳以下)109名が、東京の韓国YMCAで開かれた次世代グローバル創業貿易スクールに参加した。世界韓人貿易協会(World OKTA)が、毎年世界の支会で行う現地のヤングコリアン向けに行うビジネス教育だ。

 日本には東京支会、大阪支会、名古屋支会、福岡支会そして千葉支会と五つの支会があり、通常は各支会が独自で次世代教育を行っているが、今年は五つの支会が東京に集まり統合次世代教育を行った。これは次世代貿易スクールを03年に始めて以来18年の第16回目で初めての試みである。

 主な教育内容は以下の通りである。①韓国の歴史、経済状況、World―OKTA Identity②貿易実務、マーケティング手法、海外韓国人CEOおよび次世代成功事例③グローバル次世代ネットワークの構築と必要性、そしてその活用方案④国際的なビジネス現状と展望、世界経済の動向と競争力強化のテクニック。

 以上のテーマに対して四つの講演と貿易実務ゲームが行われた。第1講演「貿易で世界の中心に立つ」、


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