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2018/12/21

<オピニオン>韓国経済講座 第212回                                                        アジア経済文化研究所 笠井 信幸 筆頭理事

  • アジア経済文化研究所 笠井 信幸 筆頭理事

    かさい・のぶゆき 1948年、神奈川県横浜生まれ。国際開発センター研究員、ソウル大学経済研究所客員教授、秀明大学教授。アジア経済文化研究所筆頭理事・首席研究員、育秀国際語学院学院長。

  • 韓国経済講座 第212回

◆所得主導政策の効果◆

 最低賃金引き上げ論争が活発だ。日本では安倍ノミクスにおいて、企業業績の好転を給与の増加に結びつけ、さらに消費を押し上げようという「経済好循環」を実現するための1つの方策という位置づけで、最低賃金の引き上げをおこない、都道府県ごとに設定される地域別最低賃金は、毎年10月を目安に改定される。2018年の改定は、景気の回復もあり高水準になるといわれている。

 さらに最低賃金引き上げにこだわるのは、とりわけ地方産業における人手不足の深刻さへの対応で、地方での引き上げ幅が大きい。有効求人倍率をみると、13年4月に0・88倍だった日本の有効求人倍率は、今年3月に1・59倍、つまり就職希望者100人当たり159件の雇用があることを示し、有効求人倍率が高いほど人手不足が深刻な状態なのである。

 これに対して、韓国雇用情報院が集計する求人倍率は13年6月の0・87倍から今年3月には0・60倍に落ちている。韓国は就職希望者100人が60件の雇用を巡って争っている。日本と韓国は全く逆な状況で、日本の最低賃金引き上げの論拠から言うと賃金引き上げより韓国は職場の数を引き上げなければならない。

 本来、所得増大効果に期待されることは、所得引き上げにより、まず民間消費が増大し、次に貯蓄の増大につながる。また、家計負債の縮小効果も期待されよう。内需の拡大は企業活動を活発化させ、設備投資増大にもつながる。こうした波及効果によりようやく成長へとたどり着くのである。いうまでもなく国民経済の規模にもよるが、かなりの時間を要するし、こうした好循環が途切れることなく続いてゆくとは限らない。安倍ノミクスでも13年から5年をかけてようやくデフレ感、不景気感が薄らいできたのである。

 韓国は、これまで輸出主導の先進国キャッチアップ成長モデルで、大規模輸出企業が先導し、内需型企業はこれに従うことで市場を確保してきた。しかし、


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