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2019/01/11

<オピニオン>曲がり角の韓国経済 第39回 国民年金制度の改編案が成功するためには                                                     ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

  • ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

    キム・ミョンジュン 1970年仁川生まれ。韓神大学校日本学科卒。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て現在、ニッセイ基礎研究所准主任研究員。

◆企業や労働者が納得できる徹底した議論を◆

 韓国政府は2018年12月14日に国民年金と65歳以上の高齢者のうち、所得認定額が下位70%に該当する者に支給される基礎年金を合わせ、月100万㌆前後の年金給付を保障する内容の国民年金制度改編案を提示した。韓国の保健福祉部がこの日発表した「第4次国民年金総合運営計画案」には、所得代替率(国民年金の給付水準、40~50%)と保険料率(9~13%)、そして基礎年金給付額(月額30万~40万㌆)を調整した四つの案が提示されている。

 第1案(現行制度維持案)は、現在の保険料率(9%)と所得代替率(40%)を維持し、基礎年金を2021年に月額30万㌆に引き上げる案である。2007年に改正された国民年金法によると、2018年現在45%である所得代替率は毎年0・5%ずつ引き下げられ2028年には40%になるように設計されている。第1案が実施されると、平均所得者(1カ月の所得が250万㌆である者)が国民年金に25年間加入した場合の国民年金と基礎年金を合わせた実質給付額(以下、平均所得者の1カ月平均給付額)は86・7万㌆となる。

 第2案(基礎年金強化案)は、第1案のように現在の国民年金制度を維持しながら、65歳以上の高齢者のうち、所得認定額が下位70%に該当する者に支給される基礎年金を月額40万㌆に引き上げる案である。

 基礎年金が上がると、平均所得者の1カ月平均給付額は101・7万㌆となる。但し、第2案を実施するためには韓国政府の財政負担が大きい。韓国政府は、基礎年金を月額40万㌆に引き上げた場合、2022年だけで20・9兆㌆が、さらに2026年には28・6兆㌆の関連予算が必要であると推計している。

 第3案(老後所得保障強化案①)は、保険料率を引き上げて、所得代替率を高める案である。つまり、第3案では、現在9%である保険料率を2021年から5年ごとに1㌽ずつ引き上げ、2031年には12%とすることにより、所得代替率を45%に高めることを提案している。第3案が実施されると平均所得者の1カ月平均給付額は91・9万㌆となる。

 第4案(老後所得保障強化案)も第3案と同じく、保険料率を引き上げて、所得代替率を高める案である。第4案では、現在9%である保険料率を2021年から5年ごとに1㌽ずつ引き上げ、2036年には12%にし、所得代替率を50%に高めることを提案している。その場合、平均所得者の1カ月平均給付額は97・1万㌆となる。

 四つの改編案を適用した場合、国民年金の積立金が底をつく年は、第1案と第2案が2057年、第3案が2063年、第4案が2062年と試算された。

 また、2018年12月24日には「第4次国民年金総合運営計画案(以下、計画案)」が国務会議で審議・発表された。計画案では、上記で説明した四つの改編案以外にも信頼できる年金制度に向けての改善案が発表されている。

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