◆目先の損得に惑わされない長期的な政策実施を◆
韓国銀行は4月18日に発表した「2019年経済展望(修正)」で、韓国の経済成長率(実質)の予測値を2・5%に下方修正した。これは今年の1月24日に発表した19年経済展望の予測値2・6%を0・1㌽下回る数値である。経済成長率の予測値は18年4月から今年の4月までの1年間で4回も下方修正された。一方、韓国銀行が4月25日に発表した「19年第1四半期実質国内総生産(GDP)速報」によると、19年第1四半期の経済成長率は対前期比マイナス0・3%と、世界金融危機だった08年第4四半期の経済成長率がマイナス3・3%になって以降、およそ10年ぶりの最低値を記録した。民間および政府の消費支出は対前期比それぞれ0・1%と0・3%ずつ増加したものの、輸出は半導体をはじめとする主力製品の不振が続いた結果2・6%も減少し、さらに設備投資は10・8%も減少した。
経済成長率がマイナスに転じたのは文在寅政権になってからもう2度目のことである。80年代以降の歴代大統領のうち、経済成長率の減少を二回以上経験したのは盧泰愚元大統領(88年第2四半期=マイナス2・0%、89年第1四半期=マイナス0・1%)と金大中元大統領(98年第1四半期=マイナス7・0%、98年第2四半期=マイナス0・6%、00年第4半期=マイナス0・7%)のみであった。盧泰愚元大統領の場合は、88年と89年の年間経済成長率がそれぞれ11・9%と7・0%になったので、一時的に経済成長率がマイナスになったことは大きな問題にはならなかった。また、金大中元大統領時代に経済成長率がマイナスになったことは97年末に起きたアジア経済危機の影響が大きく、その後韓国経済が回復し始めたので非難の的になることはなかった。まだ、文在寅大統領の経済政策を評価することは時期尚早かも知れないが、このままだと非難を免れない可能性が高い。
現在の韓国の経済情勢に危機感を感じたのか、文大統領は今年の4月30日にサムスン電子の華城事業場を訪ねた。文大統領がサムスン電子を訪問したのは就任してから初めてのことである。文大統領はこの日、開かれた「非メモリー半導体(システム半導体)ビジョン宣言式」に参加し、「現在、半導体分野は韓国の輸出の20%を占め、17・5万人が働いている」と強調しながら、「政府も分野別に革新戦略を立て国民と企業が新産業分野に進出できるように積極的に支援する」と話した。政府は、4月22日に非メモリー半導体、バイオ、未来型自動車を「3大重点育成産業」に選定しており、今後非メモリー半導体を中心とした非メモリー半導体産業に政府主導でドライブをかけると対外的に公表したばかりである。
半導体メモリー分野ではサムスン電子とSKハイニックスが健在し、韓国企業の世界シェアはDRAMが70%以上、NANDフラッシュメモリーが40%以上を占めている。しかしながら、システム半導体分野における韓国企業のシェアは3~4%で、世界1位の米国(60~70%)はもちろん、欧州や台湾にもおされている。
半導体メモリーがデータを記憶して保存する機能があることに比べて、非メモリー半導体はデータを処理して演算・制御する機能を持つ。従って、今後各国政府が自律走行、AIなど第4次産業革命をさらに推進することを考慮すると、半導体メモリーより非メモリー半導体の成長可能性が高いと言える。サムスン電子は非メモリー半導体分野での劣勢を乗り越えるため今年の4月に、30年までに非メモリー半導体分野に133兆㌆を投資すると発表した。
文大統領のサムスン電子への訪問に対しては賛否両論がある。保守層は、韓国経済が直面している危機を乗り越えるためには、
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