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2019/04/12

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第73回 米朝首脳会談と激変する韓半島・北東アジア⑨                                                    多摩大学経営情報学部・大学院経営情報学研究科 金 美徳 教授

  • 多摩大学経営情報学部・大学院経営情報学研究科 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部及び大学院経営情報学研究科(修士・博士課程)教授、アクティブ・ラーニングセンター長。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。㈱三井物産戦略研究所を経て現職。

◆非核化の解釈や認識に大きな違い◆

 米朝首脳会談について分析・評価し、今後の韓半島、さらには北東アジアの行方を考える。

 2回目の米朝首脳会談は、2月27日ベトナムの首都ハノイで開催されたが、大きな期待とは裏腹に北朝鮮の非核化をめぐって溝が埋まらず、合意文書の署名が見送られた。

 米朝首脳会談は、非核化交渉が決裂し、失敗に終わった。北朝鮮は自らのペースで「段階的非核化と、それに相応した段階的制裁解除」で合意できると高を括っていたが、米国は「完全な非核化」、すなわち「最終的かつ完全に検証された非核化」を要求したため、非核化の解釈や認識において大きな違いが生じた。

 ただ1回目の米朝首脳会談では、トランプ大統領が、「米国が段階的非核化を受け入れた」と思わざるを得ないニュアンスの会談・合意内容であったのも事実である。核問題を解決するのにあたり「段階的非核化」と「完全非核化」のどちらの方法が、有効的であろうか。

 「段階的非核化」は、成功例が多く、現実的であるが、10年以上の長期にわたる時間がかかり、核開発国に相当な妥協を余儀なくされる。

 一方、「完全非核化」は、短期間に解決ができ、理想的であるが、核開発国が応じなければかえって核開発を活発化させる可能性がある。

 この「ハノイの決裂」から1カ月半が過ぎたが、北朝鮮は沈黙を続けており、次の一手に手をこまねいている。金正恩委員長は、2011年12月17日に政権を継承し、7年4カ月が経ったが、核・ミサイル問題をはじめとする外交は迷走に迷走を重ね、打つ手、打つ手すべて失敗に終わっている。

 また、内政は後戻りのできない政治構造上の悪循環に陥っており、経済も破綻に向かっているように伺える。

 しかし当然ながら北朝鮮の見方は、全く違う。金正恩政権は、政権誕生以降、外交はすべて大成功し、内政と経済も過去最高と主張している。果たしてどちらが、正しい評価なのだろうか。金正恩政権が、外交・内政・経済が上手く行っていると評価しているのであれば今後とも外交戦略や経済政策に大きな変更はないであろう。

 外交戦略は、これまで通り「危機(クライシス)→交渉(ネゴシエーション)→合意(アグリメント)」(1994年、2005年、2012年の3回)を繰り返す。

 また、核・ミサイル戦略は、新たな生産の一時的中止や新技術開発の中断があったとしても完全な核放棄・非核化は行わない。さらに、経済政策は、経済制裁を口実に構造改革が一向に進まず、経済破綻に突き進むであろう。

 金正恩委員長は、「ハノイの決裂」を予感していたのか、今年1月1日の「新年の辞」で、米国が何かを一方的に押し付けることを試み、制裁を課すことに固執する場合には「新たな道を見出すことを余儀なくされよう」と述べている。

 金正恩委員長がいう「新たな道」とは、どのような道なのか。到底、楽観はできない。悲観的になるどころか、恐怖感さえ覚えるというのが一般的な見方であろう。

 北朝鮮の論理に基づいて冷静に分析するならば、


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